研究課題/領域番号 |
17KK0125
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小川 修一 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (00579203)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | 熱酸化プロセス / リアルタイム光電子分光 / 光電子顕微鏡 / 酸化反応自己停止 / 電気・電子材料 |
研究実績の概要 |
ケイ素(Si)原子1層の層状物質であるシリセンはトポロジカル絶縁体であることが予想されており、次世代の高速・省エネデバイスへの活用が期待される。基課題では、熱酸化プロセスにおける酸化反応自己停止を用いることで、酸化膜で囲まれたシリセン(シリセンインオキサイド:SIO)を作製することを目指している。その一方で、基課題で用いる分光学的手法は、デバイスにおいて特性劣化の要因となる界面欠陥の評価が難しいという欠点がある。本研究ではSIO構造の高品質化を目的として、キャパシタやトランジスタの電気特性測定結果をもとにした界面欠陥評価方法の開発を行う。開発した評価方法を用いて得た欠陥の情報をSIO構造作製プロセスにフィードバックし、界面欠陥の少ないSIO作製プロセスの開発を目指すことを目的とする。この目的を達成するために研究を進め、本年度は以下の成果を得た。 (1) 大面積シリセン・イン・オキサイド構造作製技術の開発:20×20 mm2以上の大面積SIO構造基板作製のために必要な加熱システムを開発し、SPring-8のBL23SUに設置された表面化学反応分析装置に取り付けを行った。 (2) SIO基板を用いたデバイス作製に向け、プロセスの習熟および問題点を明らかにするため、グラフェンデバイス作製を行った。研究協力者の協力を得ながら、Cu基板上へのグラフェン成長および成膜したグラフェンの六方晶系窒化ホウ素(h-BN)上への転写を行い、光電子顕微鏡観察を行った。本研究によりh-BN/グラフェン系のバンドオフセットを決定することができ、グラフェン被覆に伴うh-BNのフェルミ準位変動を初めて実験的に観察できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
赤外線加熱装置を用いた表面化学反応分析装置での急速加熱に成功した。その一方、試料の温度測定に問題がみつかり、試料ホルダの改良が必要なことが明らかとなった。またSOIデバイスの作製に向けて、二次元層状物質であるグラフェン/h-BNのバンドオフセットおよびフェルミ準位変動を明らかにした。以上のことから目標達成に向けて概ね順調に研究が進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度で明らかになったSIO構造作製時における温度測定の問題を解決するため、試料ホルダの改良を進める。また再びシンガポール国立大学を訪問し、二次元層状物質を用いたデバイスの試作を試みる。これらの結果を踏まえて当初の目標であるSIOデバイス作製に向けて研究を進める。
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