研究課題
ケイ素(Si)原子1層の層状物質であるシリセンはトポロジカル絶縁体であることが予想されており、次世代の高速・省エネデバイスへの活用が期待される。基課題では、熱酸化プロセスにおける酸化反応自己停止を用いることで、酸化膜で囲まれたシリセン(シリセンインオキサイド:SIO)を作製することを目指している。その一方で、基課題で用いる分光学的手法は、デバイスにおいて特性劣化の要因となる界面欠陥の評価が難しいという欠点がある。本研究ではSIO構造の高品質化を目的として、キャパシタやトランジスタの電気特性測定結果をもとにした界面欠陥評価方法の開発を行う。開発した評価方法を用いて得た欠陥の情報をSIO構造作製プロセスにフィードバックし、界面欠陥の少ないSIO作製プロセスの開発を目指すことを目的とする。この目的を達成するために研究を進め、本年度は以下の成果を得た。(1)Siウェハ加熱用ホルダの改良:昨年設置した赤外線加熱システムの効率化を目的として、Siウェハを保持するホルダの改良を行った。その結果、昇温速度の増加や最高到達温度の改善が達成できた。これによりSIO作製プロセスにおいて熱酸化温度の精密制御が可能となった。(2)二次元層状物質を用いたデバイス作製工程の検討:シンガポール国立大学にて、二次元層状物質デバイスの実績を持つ研究室に滞在し、デバイス作製工程の検討を行った。(3)二次元層状物質による試作デバイスのバンド構造測定:光電子顕微鏡を用いてグラフェン/h-BN積層構造のバンドオフセットを調べた。また関連研究として、グラフェン膜の酸素バリア効果についても検証を行った。2020年度は引き続きその実験結果の解析を続ける。
2: おおむね順調に進展している
SIO作製のための赤外線加熱装置が順調に稼働し、また試作した二次元層状物質デバイスのバンドオフセット観察を実施できたことから、研究は順調に進展していると判断できる。
グラフェン/h-BN試作デバイスの測定結果を踏まえ、2020年度は熱酸化により作製したSIO構造シリセンデバイスの測定を実施する予定である。しかしながら、新型コロナウイルス感染拡大による状況がいつまで続くのか不明で海外渡航の目処がたたないため、2020年度は研究進展が遅延することが想定される。当面はこれまで測定したデータの解析を進めつつ、日本国内で実施可能な代替実験手法を模索するなど、研究を予定通り進捗させるための方策を検討する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
Japanese Journal of Applied Physics
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