研究課題
ケイ素(Si)原子1層の層状物質であるシリセンはトポロジカル絶縁体であることが予想されており、次世代の高速・省エネデバイスへの活用が期待される。基課題では、熱酸化プロセスにおける酸化反応自己停止を用いることで、酸化膜で囲まれたシリセン(シリセンインオキサイド:SIO)を作製することを目指している。その一方で、基課題で用いる分光学的手法は、デバイスにおいて特性劣化の要因となる界面欠陥の評価が難しいという欠点がある。本研究ではSIO構造の高品質化を目的として、キャパシタやトランジスタの電気特性測定結果をもとにした界面欠陥評価方法の開発を行う。開発した評価方法を用いて得た欠陥の情報をSIO構造作製プロセスにフィードバックし、界面欠陥の少ないSIO作製プロセスの開発を目指すことを目的とする。2021年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で海外研究機関に渡航しての十分な実験ができなかったが、国内で実施可能な研究を進め以下の成果を得た。1)シリセンデバイスに向けたドーピング制御方法の検討シリセンデバイスの活用では不純物ドーピングによる電気特性変調も重要である。熱酸化プロセスの酸化反応自己停止を用いて作製したシリセンはSiウェハへドーピングした不純物と同種の不純物を含むと考えられるため、2021年度は酸化反応自己停止現象のドーピング依存について検討した。また二次元物質へのドーピング機構の解明を目指し、カリウムドープグラフェンの物性評価を行った。
3: やや遅れている
本年度も所属機関において海外渡航を強く禁止されていたため海外機関へ渡航することができなかった。そのためデバイス作製など当初の予定を遂行することができなかった。その一方、Siウェハ酸化における自己停止反応のSi基板伝導度依存やカリウムドープグラフェンなどの研究は順調に進展し、当初の研究目標を補完する成果が得られた。以上を踏まえ「やや遅れている」と判断した。
新型コロナウィルスの感染状況を注視し、海外渡航による研究の完成を目指す。その一方、2022年度も海外渡航ができない場合に備え国内で実施できる研究を引き続き進めていく。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件)
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