研究課題
ケイ素(Si)原子1層の層状物質であるシリセンはトポロジカル絶縁体であることが予想されており、次世代の高速・省エネデバイスへの活用が期待される。基課題では、熱酸化プロセスにおける酸化反応自己停止を用いることで、酸化膜で囲まれたシリセン(シリセンインオキサイド:SIO)を作製することを目指している。本研究ではSIO構造の高品質化を目的として、Siウェハ酸化メカニズムの解明と電気特性測定結果をもとにした界面欠陥評価方法の開発を行う。開発した評価方法を用いて得た欠陥の情報をSIO構造作製プロセスにフィードバックし、界面欠陥の少ないSIO作製プロセスの開発を目指すことを目的とする。2022年度は新型コロナウイルス感染拡大による影響が一部緩和されたものの、引き続き海外研究機関に渡航することが叶わなかった。本目的を達成するための代替手段として国内で実施可能な研究を進め、以下の成果を得た。1)キャリアトラップによる界面欠陥活性化プロセスの解明:Siウェハの熱酸化時に生成される点欠陥にSiウェハのキャリアがトラップされることによって点欠陥が化学的に活性となり、SiO2/Si界面での反応が促進されることを明らかにした。本研究によれば、高品質SOI構造作製のためにはキャリア密度の少ないSIO基板の利用が有用であると予測される。2) SiO2/Si界面反応における準安定状態O2分子の存在証明:界面に存在する欠陥にO2分子がトラップされる際、準安定状態になっていることを光電子分光により証明した。準安定O2分子はSi表面での酸化過程でも存在することが既報である。このことはSiO2/Si界面酸化をSi表面酸化のアナロジーとして考察できることを示しており、Si表面酸化の研究を進めることが界面酸化停止条件の探索に有用であると期待される。
2: おおむね順調に進展している
新型コロナウィルス感染拡大に伴い海外機関への渡航が叶わなかったものの、Si酸化自己停止条件探索の要となる成果を挙げることができた。このことを総合的に勘案しおおむね順調に進展していると考えられる。
本年度得られたキャリア密度に依存するSiO2/Si界面酸化速度の研究成果をもとに、低キャリア密度基板を利用することでSiO2/Si界面の欠陥を低減できるという仮説の実証実験を進める。またこの条件で形成したSiO2/Si界面の欠陥密度が減少していることを電気的特性評価からも検証したい。またこれまでの研究を取りまとめ、Si基盤酸化の自己停止現象の解明と欠陥密度が低いSiO2/Si界面京成条件の指針を得る。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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