研究課題
今年度は、国際共同研究において物性評価の対象とするGaAs:NおよびGaInAs:N系材料について、様々な組成・積層構造を持つ結晶薄膜の成長、およびそれらを光吸収層とした単接合セルの試作を行った。作製した試料は、XRD測定などで設計どおりの組成・積層構造が得られていることを確認した。また、本課題で目的とする、複数の中間バンド型セルのタンデム化を実現するにあたり、サブセル間の電流整合の制限がなくバンド構造の設計自由度を増加できる3端子デバイス構造の適用を検討した。サブセル接合部のコンタクト電極を光照射面側に配置する場合、電極による開口率の低下が避けられないが、p型とn型の電極をいずれも裏面に集約した裏面電極型太陽電池をボトムセルとすることで、2端子デバイスと同等の開口率が得られる。これまでⅢ-Ⅴ族化合物半導体太陽電池において裏面電極セルの作製が試みられた例は極めて限られていることから、デバイス設計の指針を得るために2次元デバイスシミュレータSILVACO・ATLASを用いて、GaAsをベースとした裏面電極型太陽電池の特性予測を行った。2 um厚のp-GaAsを光吸収層として裏面にn型・p型電極を配置し、電極サイズを変えながら発電特性を求めた結果、変換効率は電極サイズに大きく依存した。今回用いた構造ではn型電極とp型電極の幅をそれぞれ600umと10um程度にした場合変換効率は最も大きくなり、20%を超える変換効率が得られることが分かった。今後は中間バンドセルを想定した2段階の光吸収の効果などを取り入れた解析を行い、実際のセル作製における構造設計の指針とする。
2: おおむね順調に進展している
日本国内での試料作製を終え、国際共同研究を実施するための渡航と長期滞在を開始した。渡航先研究機関では実験の実施に必要な一連のトレーニングを順調に進めている。
研究計画に則り、様々な組成を持つ希釈窒化物半導体材料についてエネルギー構造を中心とした物性評価の他、デバイス構造およびプロセスの検討を進める。必要な試料の追加作製などは日本国内の所属機関との連携も保ちつつ対応していく。
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巻: 89 ページ: 521~527
10.1016/j.optmat.2019.01.047
Journal of Applied Physics
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