研究実績の概要 |
ヘリウム(He)線強度の発光分光法(OES)は,さまざまなプラズマ装置における電子密度ne,温度Teの測定に用いられてきた。本研究では,5つの隠れ層を持つニューラルネットワーク(NN:Neural network)を導入し,直線型プラズマ装置Magnum-PSIにおけるレーザートムソン散乱からのneやTeとOESデータとの関係をモデル化し,重回帰分析と比較検討した。入力パラメータとしては,正規化された9個の発光強度(388.9, 402.6, 438.8, 447.1, 492.2, 501.6, 667.8, 706.5, and 728.1 nm)と半径方向の位置の10個である。NNは隠れ層が5層あり,隠れ層のニューロン数は入力側から256,128,64,64,16である。NNはneとTeに対して2つ別々に用意した。第1隠れ層はReLU(rectified linear unit)活性化関数を用い,他の隠れ層はシグモイド関数を用いた。NNを導入すると重回帰分析の結果と比較して,予測された温度・密度のデータのばらつきが非常に小さくなっており,NNによって予測の精度が大きく向上した。学習用データ量を増やすと,誤差はneとTeの両方で約10%に減少することが明らかになった。本研究では,OESデータがneとTeを機械学習を導入することにより衝突輻射モデルよりもはるかに高い精度で評価するのに十分な情報を含んでいることが分かった。今後,この方法は,レーザートムソン散乱が利用できない場合においてもneとTeの測定領域を拡張することが可能である。例えば,より高速な検出器を用いれば,レーザーパルス周波数(現時点では10 Hz)で決まるトムソン散乱よりも高い時間分解能が得られ,ハイパースペクトル画像と組み合わせることで2次元計測も可能になる。
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