研究課題/領域番号 |
17KK0137
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
佐藤 真一郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主幹研究員(定常) (40446414)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2019
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キーワード | 窒化ガリウム半導体 / 希土類元素 / 光検出磁気共鳴 / 量子センシング |
研究実績の概要 |
ランタノイドドープGaNによる光検出磁気共鳴(ODMR)に基づく量子センシングを実証するためには、効率的な発光条件(共鳴励起条件)を見出し、高い発光強度を得る必要がある。そこで2018年度では、ランタノイド(Pr、NdおよびEu)に対する最適な励起光波長を明らかにした。1μm×1μmの微少領域に注入されたランタノイドからの発光を、共焦点レーザー走査型蛍光顕微鏡によって検出し、その発光強度が励起光波長によってどのように変化するかを調べた。その結果、ランタノイド固有の共鳴励起波長が複数観測された。例えばPrの場合では、共鳴励起条件での信号・バックグラウンド比が従来の532nm光励起と比較して12倍に向上した。これにより、光の回折限界未満の領域(200nmΦ未満)に注入されたPrからの高感度発光観測が可能となった。同様に、NdやEuに対しても共鳴励起条件を明らかにした。また、フォトルミネッセンス(PL)スペクトルの励起光波長依存性を調べ、特にNdについては、励起光波長がPLスペクトルに大きく影響することを明らかにした。これは、Ndの発光サイトが複数種存在しており、励起光波長によって発光プロセスが異なっているためであると考えられる。さらに時間分解PL測定によりPrおよびNdの発光遷移寿命の同定にも成功した。発光遷移寿命は、発光中心としての輝度を示す指標のひとつであり、短いほど輝度が高いことを意味するが、ランタノイドにおいてはμ秒オーダ-と比較的長いため、これを短縮させることによってさらなるランタノイドドープGaNの高強度発光を目指す必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2018年度では、特にイオン注入したPrやNdを効率的に発光させる条件(共鳴励起条件)を明らかにすることを中心に研究を進め、当初の目標を達成することが出来た。また、最小100nm×100nmの領域に1E4個イオン注入したPrからの発光の観測に成功しており、さらに少ないアンサンブル数での観測が可能である見込みが得られている。加えて、発光遷移寿命やPLスペクトルの励起光波長依存性といった、当初の計画に含めていないが本研究において重要な知見を得ることに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
GaNにドープしたNdやPrの光学的特性は2018年度で詳しく明らかにすることができたため、今後はODMR観測を中心に取り組んでいく。 GaNエピ膜の微小領域に注入したNd3+もしくはPr3+に対し、共鳴励起条件でのODMR測定を行う。高周波印加条件(周波数、強度)を最適化し、磁場や電場印加時のODMRスペクトルの変化を調べる。必要に応じて、試料を低温にし、ODMRの感度を向上させるなどの工夫を行う。 上記に加え、単一ランタノイド観測に向けたNdのイオン注入条件や熱処理条件の検討を引き続き行っていく。
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