研究課題/領域番号 |
17KK0139
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
丹羽 伸介 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (30714985)
|
研究期間 (年度) |
2017 – 2019
|
キーワード | キネシン / 軸索輸送 / KIF1A / UNC-104 / kinesin |
研究実績の概要 |
KIF1Aは軸索輸送を担うモータータンパク質である。バキュロウイルスを用いることでヒトKIF1A全長に赤色蛍光タンパク質であるmScarletを融合したリコンビナントタンパク質を昆虫細胞sf9に発現し、精製することに成功した。精製したKIF1A::mScarletを用いて全反射蛍光顕微鏡を用いた1分子アッセイを行った。その結果、全長KIF1Aはprocessiveに微小管上を動くことがわかった。次に神経疾患を引き起こすKIF1A遺伝子の点変異を導入したKIF1A::mScarletを用いることで同じアッセイを行った。その結果、3つの変異体で微小管への結合が上昇することがわかった。さらに二つの変異体については速度が上昇していた。これらのデータは疾患変異がKIF1Aの活性を亢進していることを示唆している。 線虫ではUNC-104とよばれるキネシンがKIF1Aのホモログとなる。ヒトに疾患を引き起こすようなアミノ酸部位は線虫でも保存されている。そこでゲノム編集を用いることで疾患原因となる点変異を導入した疾患モデル線虫を作製した。この線虫の表現型を解析したところ、ダイニンのloss of function型変異体と同様にシナプス小胞が軸索末端に集積することがわかった。シナプス小胞前駆体の軸索輸送をタイムラプス顕微鏡法で解析したところ、軸索輸送の量が増加していた。 異常のことから、神経疾患を引き起こす点変異は軸索輸送モーターKIF1Aの活性を亢進し、軸索輸送を活発にすることが明らかとなった。現在、論文を投稿準備中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画に述べた実験はすべて終えて、すでに論文を投稿準備中である。 また、KIF1Aの尾部には、これまで知られていなかった「微小管上におけるKIF1Aの動きをコントロールする機能ドメイン」が存在することを示唆する新たなデータが得られた。「KIF1Aを含むkinesin3ファミリーは不活性化状態ではモノマーであり、カーゴに結合するとダイマーを形成して活性化する」という定説と異なり、「ヒトKIF1Aは最初からダイマーとして存在しており、自己阻害によってのみ制御される」ことを示唆するデータが得られている。そのため本研究計画は当初の予想以上に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
論文を投稿し、査読者のコメントに沿って追加実験を行う。 それに加えて、「現在までの進捗状況」に述べたようにKIF1Aの尾部には、これまで知られていなかった「微小管上におけるKIF1Aの動きをコントロールする機能ドメインが存在すること」「ヒトKIF1Aは最初からダイマーとして存在しており、自己阻害によってのみ制御されること」を示唆する新たなデータが得られた。これまでは1分子解析はアメリカにおける共同研究先であるRichard McKenney助教授研究室で行ってきたが、McKenney助教授の助言を受けながら日本の所属研究機関においても1分子解析を行う実験系を立ち上げて研究を発展させる。
|