研究課題/領域番号 |
17KK0140
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渡辺 秀典 東北大学, 医学系研究科, 助教 (00407686)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2021
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キーワード | オプトジェネティクス(光遺伝学) / 一次運動野 / ベータ波 / 位相ロック / 上肢到達運動 / サル |
研究実績の概要 |
ベータ波は運動時に発生する脳波として知られているが運動中のどのような情報を表現するのか不明な点が多い.申請者はサルの大脳皮質運動野でベータ波の特定の位相が運動準備中に課題の条件に応じて出現する現象(位相ロック)を発見した.この現象と運動の因果関係を調べるため,光遺伝学的手法を用いて神経活動を制御してベータ波の位相ロックが運動に与える作用を解明する. 基課題では麻酔下実験において一次運動野への光刺激で上肢運動の即時惹起が可能なほどに高効率な光感受性タンパクの発現に成功した.本課題では覚醒下の運動課題中においてベータ波と同期した光刺激によって周期的神経活動の変調とサルの行動変化の関係を明らかにする.そこで覚醒行動下のサルの上肢運動の定量分析に豊富な経験を有し,かつベータ波について世界的第一人者であるシカゴ大学のDr. Hatsopoulosと共同研究をする. 当該年度はシカゴ大学にて1頭のサルに上肢到達課題を習熟させた後に光感受性タンパクを発現させるウイルスベクターを大脳皮質一次運動野に注入し,続いて光ファイバーが結合された慢性埋込型多点電極を同部位に留置手術をした.実験は課題中にベータ波の発生頻度が大となるタイミングで任意に光刺激を与えることで,神経応答の記録に成功した.サル認知課題行動下における光刺激時の多点神経応答と運動行動の同時記録は世界的に類は少なく貴重なデータセットとなる.また本成果をもって前年度における推進方策であった慢性埋込型光ファイバー結合多点電極の開発成功の証左となった.サルにおける慢性埋込型多点電極による光刺激時応答計測の実験方法は現存しておらず,本研究手法の継続が期待されている. 基課題の成果が査読有国際論文誌に採択され,多くの国内外のマスメディアで紹介された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の流行下におけるシカゴ大学動物実験センター及びイリノイ州の感染症対策により研究活動と生活治安に多大な支障を受けた.感染対策下のシカゴ大学において成果を得るべく,実験研究プロトコルを大きく変更し,実験を成功させた.一方で感染対策下では大学実験施設内の行動に多くの制約を受けるため当該年度の以上の成果を得るための事業の継続は困難と判断し,12月に帰国した.
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今後の研究の推進方策 |
データ解析は生活と治安に脅威のない国内で行う.ベータ波の位相ロック時の光刺激神経応答及び上肢運動の変化について次年度にデータを詳細に分析する.電極留置部位及び光感受性タンパクの発現部位を確認するため,シカゴ大学の共同研究者に実験動物の脳組織灌流固定を依頼している.灌流固定後の脳組織は東北大学に発送され免疫染色を行う予定である.また東北大学にて当実験課題を継続できるよう実験装置の改良を検討する.以上,東北大学で引き続き当研究を展開するべく令和3年度までの補助事業期間延長を申請した.
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