研究課題/領域番号 |
17KK0141
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松井 崇 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (30463582)
|
研究期間 (年度) |
2018 – 2020
|
キーワード | クライオ電子顕微鏡 / 単粒子構造解析 / 生合成酵素 |
研究実績の概要 |
細菌感染症は近年、多剤耐性菌の出現による再興や新興感染症との接触により社会的な問題となっている。そこで、既知薬剤標的ではない異なる機構を持った標的分子の設定と新規標的分子に有効な医薬品の必要性が叫ばれている。本研究では新規標的分子を細菌の細胞分裂に必須なFtsZとし、機能性FtsZが持つ自己重合による分裂点形成を抑制する化合物の探索をクライオ電子顕微鏡によって観測することを目的とする。 本研究の基課題では、化合物に抗感染症や抗腫瘍等の生物活性を付与できるプレニル基転移酵素の立体構造情報から合理的に基質触媒機能を拡張することで有用化合物の生産研究を進めている。そこで、クライオ電子顕微鏡によって蛋白質分子の挙動を観測することにより改変酵素で調製した化合物から活性分子を同定するために、クライオ電子顕微鏡に適した試料調製方法の決定、単粒子構造解析による蛋白質分子の構造解析法の習得と解析環境の構築を目指した。 単粒子構造解析による蛋白質分子の構造解析において、まずはじめに、スルメイカヘモシアニンを用い、その構造解析を通して解析手法の習得と解析環境の構築を目指した。その結果、3.8MDaのスルメイカヘモシアニンの立体構造を4.2オングストローム分解能で同定することに成功した。 また、目的試料において、その試料調製方法を確立し、ウラン染色による電子顕微鏡において分解能20オングストローム程度の低分解能構造を決定することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クライオ電子顕微鏡による単粒子構造解析法を習得するモデル試料として、スルメイカヘモシアニンの立体構造解析に着手し、スルメイカヘモシアニンの立体構造を決定できた。また、国際共同研究を通して単粒子構造解析に必要な解析環境で研究を進めたことで、同様な解析がある程度可能な環境を国内の研究室に構築することにも成功した。 さらに、本目的試料についても同様な手法を用いて単粒子構造解析を進めるために、日本で調製した試料を空輸し、まずはウラン染色した試料を用いて電子顕微鏡で観察し、その試料状態を確認した。その結果、活性測定用の試料調製方法で調製した試料には異なる構造状態を持つ同一蛋白質が複数状態存在していることが明らかとなった。この精製純度では電子顕微鏡による構造解析は不可能であったため、マックス・プランク研究所内で試料調製と試料状態の確認を行い、試料調製方法を確立し、ウラン染色した試料による電子顕微鏡観察と単粒子構造解析により、分解能20オングストローム程度の低分解能構造を決定することに成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
低分子化合物を付与した場合の構造変化を同定するためには、より高分解能な構造を取得する必要がある。現在、すでにクライオ電子顕微鏡での測定条件を検討中であり、次年度以降は決定した測定条件のもとで、クライオ電子顕微鏡画像を取得し、単粒子構造解析を行うことで目的蛋白質の単粒子立体構造を決定する。構造決定後、化合物を添加した場合の構造変化を追うことで、阻害分子の同定を目指す。
|