研究課題
本研究ではこれまで、ゼブラフィッシュ初期胚発生過程におこる胚ゲノム活性化 (Zygotic genome activation; ZGA)において、マイクロRNA miR-430遺伝子クラスターの転写活性化が64細胞期から開始することを、蛍光プローブを用いたゼブラフィッシュ胚のライブイメージングにより明らかにした。令和元年度は、ZGAの初期に転写されるmiR-430以外の遺伝子について核内配置の相互関係を調べるため、標的遺伝子の一次転写産物の核内局在をHybridization chain reaction (HCR) 法を用いて調べた。転写産物は、転写反応と共役してスプライシングをうけるため、一時転写産物が核内に蓄積して観察される場合は、遺伝子座の極近傍に位置していると考えられる。先行研究 (Heyn et al. 2014 Cell Reports) で報告されたearly geneのリストをもとに、上位9個の遺伝子についてイントロン領域に相補的なHCR用プローブを7~20ペア設計した。512細胞期のゼブラフィッシュ胚を固定し、HCRにより一時転写産物の検出を行った結果、9個のうち3つの遺伝子について一時転写産物を核内に2つのspotを確認することができた。miR-430 FISHと同時にHCRを行い核内配置および距離を調べた結果、今回調べた遺伝子の一時産物については、共局在や核内位置の傾向は特に見られなかった。今年度はさらに、渡航先の設備であるDiSPIMライトシート顕微鏡の操作法および光軸調整法を習得し、ゼブラフィッシュ胚のライブイメージングを行い、これまでの研究成果が再現することを確認した。
2: おおむね順調に進展している
胚ゲノム活性化初期に発現する遺伝子の一次転写産物を観察することができた。また、渡航先の設備であるDiSPIMライトシート顕微鏡を使ったライブイメージングを行うことができ、研究成果として論文を発表することができた。
ゼブラフィッシュ胚ゲノム活性化において転写活性化とクロマチン修飾の因果関係を調べるため、転写阻害薬やエピジェネティクス関連因子に対する阻害薬を用いて、初期胚のライブイメージングを行う。miR-430遺伝子クラスターに注目し、転写活性化およびクロマチン修飾の可視化プローブの集積動態を定量化する。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Development
巻: 146 ページ: dev179127
https://doi.org/10.1242/dev.179127