本研究ではこれまで、ゼブラフィッシュ初期胚発生過程におこる胚ゲノム活性化におけるmiR-430遺伝子クラスター発現機構について、蛍光プローブを用いたライブイメージングによる解析を行ってきた。令和2年度は、転写制御機構のより詳細な解析を行うため、(1) リン酸化型RNAポリメラーゼIIの可視化系の改良の検討と(2) 転写開始型RNAポリメラーゼ集積へのヒストンアセチル化依存の解析を行った。
(1) 転写開始型(Ser5リン酸化型)および転写伸長型(Ser2リン酸化型)RNAポリメラーゼIIに対する特異的抗体から可変領域をコードする遺伝子をクローニングし、1本差可変領域として蛍光タンパク質融合型として細胞内に発現させる蛍光プローブmintbodyを作製した。これらのmintbodyプローブのmRNAをin vitro合成し、ゼブラフィッシュ受精卵へのマイクロインジェクションを行った。mintbodyプローブの発現を確認するため、共焦点顕微鏡を用いて4細胞期以降の発生過程におけるmiR-430遺伝子クラスターの転写活性化状態の観察を行ったところ、4細胞期から1000細胞期まではいずれのプローブも発現レベルが低く、リン酸化状態の検出が困難であることが分かった。
(2) ヒストンのアセチル化が転写活性化のどの段階に重要であるか調べるため、アセチル化ヒストン結合タンパク質BETファミリーに対する阻害剤JQ-1を添加した胚における、転写開始型RNAポリメラーゼIIのmiR-430遺伝子クラスターへの集積の観察を行った。蛍光標識Fabプローブを用いてSer5リン酸化型RNAポリメラーゼII動態を調べた結果、JQ-1添加によりmiR-430遺伝子への集積が抑制されることが分かった。
|