研究課題/領域番号 |
17KK0145
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
田岡 東 金沢大学, 生命理工学系, 准教授 (20401888)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | 細胞骨格 / 磁気感知 / 原核細胞オルガネラ / 細菌 / 磁気微粒子 / イメージング |
研究実績の概要 |
2019年度3月から2020年度9月まで、米国カリフォルニア大学バークレー校に客員研究者として渡航し、海外共同研究者の研究室にて国際共同研究を実施した。海外共同研究者が開発した磁性細菌株(QInd株)は、マグネトソーム形成を薬剤の添加により誘導できる。QInd株と、研究代表者が開発したマグネトソームの生細胞イメージング技術を用いて、新規に合成されたマグネトソームの細胞内配置におけるMamK細胞骨格の役割を調べた。具体的には、野生型QInd株とmamK遺伝子を欠損させたQInd株において、マグネトソーム形成を誘導後のマグネトソームの細胞内動態を生細胞蛍光イメージング法を用いて比較した。その結果、マグネトソームの細胞内配置は2つの機構(ロングレンジ機構とショートレンジ機構)によって行われていることが明らかになった。興味深いことに、ショートレンジ機構はMamK細胞骨格に依存して行われているが、ロングレンジ機構はMamK細胞骨格に非依存的で、MamKとは別の未知の分子がマグネトソームの配置に関わることが明らかになった。一方で、ロングレンジ機構のみでは、マグネトソームの直鎖状固定は不十分であり、マグネトソームを安定な直鎖状に固定するためには、MamK細胞骨格が必須であることもわかった。 帰国後は、QInd株を用いたイメージング実験を所属研究室で実施できるように実験設備等を整え、渡航中に得た実験結果を検証している。また、QInd株を用いたMamK細胞骨格とマグネトソームの同時生細胞イメージングやロングレンジ機構に関わる蛋白質を同定するため海外共同研究者の協力を得てQInd株の改良を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では生細胞イメージングによるマグネトソーム動態観察法を用いて、野生型QInd株やmamK変異型QInd株の表現型を解析することで、新規に合成されたマグネトソームが配置される過程の観察に初めて成功した。また、MamK細胞骨格のマグネトソームが配置における役割を調べるとともに、未知のマグネトソーム配置機構が存在することを示唆する結果が得られた。これらの研究成果は、当初の目標を達成し予想以上の研究成果が得られた。 得られた研究成果について、海外共同研究者と共著論文を執筆し、研究成果を国際誌に発表する予定である。また、海外渡航期間中に、米国微生物学会大会(ASM microbe 2019)にて研究成果発表を行った他、Berkeley Japanese Academic Network(BJAN)、米国エネルギー省エイムズ研究所での招待講演で研究成果の発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2020年度は、渡航中に得た実験結果の再現性を研究代表者の研究室で検証する。また、2019年度の研究成果で明らかになった、ロングレンジ機構に関わる分子を同定することを目的に、海外共同研究者の協力を得てQInd株に、マグネトソームの配置に関わることが期待される複数の遺伝子に変異を導入し、ロングレンジ機構への影響を調べる。 現在使用しているQInd株は、GFPとマグネトソーム局在蛋白質の融合蛋白質をマグネトソームの標識に用いている。この方法では、新規合成されたマグネトソームを特異的に標識することはできない。そこで。QInd株を用いて、マグネトソーム形成初期に特異的に起こる蛋白質相互作用を同定し、新規に合成されたマグネトソーム特異的な蛍光標識法の開発を試みる。これにより、細胞内でロングレンジ機構とショートレンジ機構によりマグネトソームが配置される様子をより高い解像度で観察できる。
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