細菌における小分子RNA(sRNA)のmRNA制御機能には、RNAシャペロンであるHfqが必要である。これまでに、SgrS sRNAをモデルsRNAに用いて、sRNAの3'末端領域がHfqとの結合に重要であり、転写終結点がsRNAの機能決定要素であることを明らかにした。本研究では、sRNA機能構造の統一的な原理解明を目的とし、sRNAの3’末端構造、及びその形成に関与する転写終結に焦点を当てた解析を進めている。すでに、米NIHにおいて、SgrSの転写終結を阻害する遺伝因子を新規に同定した。2021年度は、同定した遺伝因子の1つであるCspDの機能解析、及びゲノムレベルの解析を実施した。主な結果として、in vivo供沈降実験により、sgrS遺伝子の転写産物とCspDの結合を明らかにした。この結果より、CspDは転写途上の新生RNA鎖に直接結合することで、SgrSの転写終結を阻害することが示唆された。CyaR、GcvBといったsRNAの解析により、SgrSと同様にこれらsRNAの転写終結もCspDにより阻害されることを明らかにした。したがって、CspDはsRNA全般の3'末端領域の形成に関与することが示唆された。さらに、RNA-Seq解析により、リボスイッチの多くがCspDの影響を受けることを明らかにした。このことより、CspDは、転写伸長・終結段階での様々な制御に関与する主要制御因子であることが示唆された。これまでの結果をまとめた原著論文が査読中である。2021年度には、Susan Gottesman博士を第22回 日本RNA学会年会(オンライン)に招聘し、日本国内のRNA研究者との交流の場を設けた。
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