研究課題
申請者らは最近、動物では1種類しか存在しないと考えられてきた糖化ステロールが、脳において一群を成して存在することを発見し、グルコシルセラミド分解酵素として知られているGBA1とGBA2が脳内糖化ステロール群の代謝酵素として機能する可能性を見出した。糖化ステロ―ルの分子種の違いにより、GBA1/2は合成活性や分解活性を発揮することがわかってきた。GBA1/2の機能不全はパーキンソン病や小脳失調を引き起こすことが知られており、GBA1/2の局在だけでなく、GBA1/2が活性を有する状態にあるか否かが病態発症に重要である。海外共同研究者は、GBA1/2に直接結合することによってグルコシルセラミド分解活性を阻害する化合物のライブラリーを有し、化合物を蛍光色素で修飾することにより、抗体を用いた従来法では困難であった活性を有するGBA1/2を組織レベルで可視化する方法を開発した。本研究では、GBA1/2がもつ様々な糖化ステロール代謝活性について、それぞれの活性に阻害効果を示す化合物をライブラリーよりスクリーニングし、活性特異的な組織化学的局在解析システムを構築することを目指す。2018年度は、海外共同研究者が有するGBA1/2の阻害剤ライブラリーを利用して、GBA1/2がもつ様々な活性を見分けられる阻害剤があるかどうかを調べた。これまでの解析では、GBA1/2が有する多様な活性を同時に阻害する阻害剤を複数見つけたが、多様な活性を別々に阻害することができる阻害剤は見つけられていない。GBA1/2の活性部位はそれぞれ1つであることが報告されており、阻害剤ライブラリーに登録されている化合物の多くは既報の活性部位に結合する。GBA1/2が複数の活性部位をもつ可能性は否定できないが、今回得られた結果より、GBA1/2がそれぞれ既報の活性部位を利用して様々な活性を発揮している可能性が浮上した。
3: やや遅れている
阻害剤ライブラリーに登録されている化合物を利用してGBA1/2がもつ様々な活性を見分けることが難しい可能性が浮上したことから、研究はやや遅れていると判断した。
活性をもつGBA1/2については海外共同研究者が開発したプローブを用いて可視化し、酵素反応産物である糖化ステロールについては糖化ステロールそのものを可視化することによって、酵素活性と酵素反応産物の局在情報を重ね合わせる方法を開発していく。
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