研究課題
2019年度は、GBA1とGBA2の酵素反応産物である糖化ステロールについて、組織化学的局在解析法の開発に着手した。従来法のマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(MALDI-TOF-MS)を用いたイメージング質量分析法では、脳組織中に多量に存在するガラクトシルセラミドによって微量脂質は埋もれてしまい、糖化ステロールの可視化は困難を極めた。また、糖化ステロールの中には、同一分子量で構造が類似する異性体が含まれるが、クロマトグラフィーを用いない従来法では異性体の分離が困難である。そこで、脳組織切片上の各区画から抽出した脂質を液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)で分離・解析し、脳組織での糖化ステロールの2次元局在解析技術を開発することにした。脳組織切片上から抽出できる脂質量は微量であるため、LC/MSを用いた糖化ステロール分析の高感度化を試みた。LCの一種である親水性相互作用クロマトグラフィーを用いると、セミミクロ流量では糖化ステロール異性体の分離が行えることから、セミミクロ流量からナノ流量へのスケールダウンを試みた。ナノ流量では、配管の体積やサンプル注入量をセミミクロ流量の場合と同一になるようにスケールダウンできないことが原因し、糖化ステロール異性体の分離が難しい可能性が浮上した。しかしながら、糖化ステロール以外の糖脂質異性体の中でナノ流量においても分離が可能であるものがあったため、糖化ステロール異性体については、今後スケールダウンの検討をさらに詳細に進めることで分離が可能になるかもしれない。
3: やや遅れている
質量分析装置を用いた糖化ステロールの組織化学的局在解析法の開発に着手したが、ナノ流量のLC条件において糖化ステロール異性体の分離を達成できていないことから、研究はやや遅れていると判断した。
引き続き、質量分析装置を用いた糖化ステロールの組織化学的局在解析法の開発を進める。また、糖化ステロールを認識する抗体の作製に着手する。質量分析装置または抗体を用いて糖化ステロールの組織化学的局在解析が可能になった場合には、海外共同研究者が開発したプローブを用いて活性をもつGBA1/2の局在を解析し、GBA1/2の酵素活性と酵素反応産物である糖化ステロールの局在情報を重ね合わせる方法を開発する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
Journal of Biological Chemistry
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