研究課題/領域番号 |
17KK0152
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
堀江 智明 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (90591181)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | 耐塩性 / イネ / 遺伝資源 |
研究実績の概要 |
本課題の実施は、平成29年度に終了した基盤研究(C)一般の研究内容と関連している。先の基盤(C)の研究においては、栽培イネ日本晴(Oryza sativa)と野生イネ(Oryza rufipogon)の戻し交雑自殖系統群(BRILs)を利用して、塩ストレス下の各イネ株の部位別に、Naを中心とした元素の蓄積を支配する遺伝子座の絞り込みを行った。QTL解析までたどり着き、実際3つの候補QTLが検出されたものの、一部解析した植物の状態が、晩秋から冬季にかけての水耕栽培時に低温と低湿度によるダメージを少なからず受けて、生理的に好ましくない状況であることが判明した。より正確なQTL解析を完遂するために、耐塩性を精査する上で我々が最も注目する葉身に焦点をあて、不具合が生じている可能性のある系統の再解析を進めた。現在も、葉身の元素分析が続いており、2019年盛夏の頃までには、全てが終了する見込みである。これまでの過程で、栽培イネとは顕著に異なるNa高蓄積(野生イネ型)株、および栽培イネよりも顕著に低蓄積させる株をいくつか発見した。QTL解析は後からになるものの、まずはBRILsの親系統である日本晴とや野生イネW630に加えて、上述のような表現型を顕著に示す系統を4独立系統づつ選抜した。これらの種子を共同研究先であるタスマニア大学に送り、2019年度以降の渡航の際に、共同研究先の独自の解析技術である、微小イオン選択性電極を用いた非侵襲的電気生理実験(MIFE法)を遂行し、Naを中心としたイオンの吸収分配の性格付けを行う。在来の遺伝学的技術と生物物理学的要素を踏まえた生理学の融合により、重要遺伝子同定のための新しい突破口が開かれることを期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
晩秋から冬季にかけての植物の生育不良を改善することに、多くの時間を費やしたが、夏までにQTL解析が実施できる見通しである。その間、2019年には、共同研究先でMIFE法によるBRILsの親系統や選抜系統の基礎的なデータ収集が可能となる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年の4月末ー9月半ばまで、タスマニア大学のShabala研究室に滞在し、MIFE法の技術の取得と基礎的なデータの習得を行う。また、2019年盛夏の頃には、より正確なQTL解析の結果が出てくる予定であり、その結果も合わせて、有力候補を厳選し戻し交雑を実施していく。同時に、NGSを利用したバルクシークエンス解析により、候補領域の更なる限定を進める。有力な厳選候補株に関して、2019年および2020年にMIFEによる解析も進めて、原因遺伝子の単離の加速を試みる。
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