研究実績の概要 |
本課題は、令和3年度に終了した基盤研究(C)一般の研究内容と関連している。基盤(C)の研究において、栽培イネ日本晴(Oryza sativa)のゲノムに野生イネ(Oryza rufipogon W630)由来のゲノムの小断片が導入された戻し交雑自殖系統群(BRILs)を利用しイネの耐塩性機構に関する研究を実施した。塩ストレスを施したBRIL系統を水耕栽培し、若い葉身へのNa, K, Ca, Mgの蓄積を支配する遺伝子座の探索を行った。その結果、各元素の蓄積に対して1つないし2つの量的形質遺伝子座(QTL)を発見した。その中でも、特にNaに関しては、1番および5番染色体に存在すると予想される、Na-QTL1およびNa-QTL5の2つを発見した。 本課題の目標の一つは、共同研究先のタスマニア大学が有する、微小イオン選択性電極を用いたMIFEと呼ばれる電気生理解析技術を取り入れ、イネの品種間のイオン輸送特性の違いを迅速に評価し、これら発見したQTLsの責任遺伝子を、より迅速に効率よく同定するための系の構築を模索することである。Na-QTL1に関しては、日本晴との戻し交雑後代集団の作製を進め、MIFE解析準備が進んでいる。Na-QTL5および他の元素に関するQTLに関しても、順次材料の準備を進める予定である。しかし、2019年にMIFEの技術習得に出て以降、新型コロナの流行により再度のタスマニアの訪問が阻まれており、進捗は遅延している。 上記のアイデアだけに留まらず、より広くMIFEの技術を自身の研究に取り入れるために、イネの耐塩性遺伝子の候補の一つに変異を有するイネ株のMIFE解析を、先方の研究室に依存する形で進めている。当研究室側でも、同変異株の塩ストレス下の生理学的な特性やイオン蓄積様式の解析を並行している。
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