研究課題/領域番号 |
17KK0154
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
増田 太郎 京都大学, 農学研究科, 助教 (40395653)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | 金属含有タンパク質 / メタロシャペロン |
研究実績の概要 |
本研究では、金属含有酵素とその活性中心の形成に関与するメタロシャペロンの相互作用機構について、分子レベルで解明することを目的とする。「酵素」と呼ばれるタンパク質の約半数がその活性の発現に金属元素を要求する。このような金属含有酵素の機能発現には、金属を含む適切な活性中心の形成が不可欠である。本研究の基課題における主要な研究対象としてフェノールオキシダーゼ (PO)があり、その活性中心には二核の銅が含まれている。POの銅を含む活性中心はアポタンパク質と銅の単純な混合では適切に形成されないことから、活性中心の形成にはメタロシャペロンによる支援が必要であると考えられる。平成30年度は、メタロシャペロンの生理的な役割と、メタロシャペロンと金属含有タンパク質の相互作用について優れた研究業績を残している米国国立衛生研究所のCaroline Philpott博士の元で、合計4ヶ月にわたって共同研究を行った。 まず、ヒトにおいて見いだされたメタロシャペロンであるポリC結合タンパク質1 (PCBP1)と金属含有タンパク質(フェリチン)の相互作用について、出芽酵母とヒト培養細胞を用いた共発現系を用いて検討した。PCBP1は、本来RNA結合性タンパク質として見いだされたマルチドメインタンパク質、フェリチンは広範な生物種において鉄代謝の中枢を担う鉄貯蔵タンパク質である。その結果、この相互作用に必須と考えられるPCBP1のドメインを明らかにした。また、フェリチン分子中のPCBP1との相互作用部位に関しても、複数の候補アミノ酸配列を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究者であるCaroline Philpott博士の研究室に二度(合計4ヶ月)にわたって滞在し、メタロシャペロンと金属含有タンパク質との相互作用について共同研究を行った。具体的には、メタロシャペロンであるポリC結合タンパク質1 (PCBP1)と金属含有タンパク質(フェリチン)の相互作用について、出芽酵母とヒト培養細胞を用いた共発現系を用いて検討した。フェリチンは広範な生物種において鉄代謝の中枢を担う鉄貯蔵タンパク質であり、フェリチンへの鉄貯蔵にPCBP1がメタロシャペロンであるPCBP1が関与していることがPhilpott博士のグループにより明らかにされている。PCBP1は類似した三つのドメインからなるマルチドメインタンパク質である。平成30年度は、まずどのドメインがフェリチンとの相互作用に関与するかについて検討し、フェリチンとの相互作用に不可欠なドメインを見いだした。また、この相互作用に関与するフェリチン側の部位についても、複数の候補を得た。以上の結果は、メタロシャペロンと金属タンパク質間の相互作用に関する新たな知見である。したがって、研究期間の一年目として本研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、金属含有タンパク質とメタロシャペロンの相互作用について、PCBP1とフェリチンの相互作用をモデルにその分子機構を解析する。平成31年度は、更に二ヶ月以上の当該研究室滞在を予定しており、当該研究室において特にこの相互作用に対するフェリチン側の必要部位を明らかにする。具体的には、平成30年度に見いだしたPCBP1との相互作用部位と考えられるフェリチン立体構造上の複数の候補箇所について部位特異的変異を加え、PCBP1-フェリチン間の相互作用と変異体フェリチンの鉄貯蔵能について、酵母、ヒト培養細胞を用いた共発現系により検討する。
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