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2020 年度 実施状況報告書

クラスター状の根を形成する植物の貧栄養適応戦略の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17KK0156
研究機関広島大学

研究代表者

和崎 淳  広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (00374728)

研究期間 (年度) 2018 – 2021
キーワード根圏 / 分泌 / クラスター根 / リン / 有機酸 / ホスファターゼ / ヤマモガシ科 / カヤツリグサ科
研究実績の概要

本研究は、基課題(基盤研究B(一般)「根分泌科学の新展開:農業生産への活用と生態学的機能」)において進めてきた根分泌物による農業生産への活用と生態学的機能のうち、特に生態学的機能とこれに関わる生理機能に注目した。特に西オーストラリアの極めて貧栄養な土壌に多く分布するヤマモガシ科植物とカヤツリグサ科植物を、わが国に分布する同じ科の植物と比較解析を行い、これらの植物の低リン耐性への寄与と土壌環境へ及ぼす影響を調査することが主要な課題である。
本研究課題においては、西オーストラリアにおける現地調査と日本における栽培調査、現地調査を組み合わせ、植物の栄養生態調査および生理機能の調査を行うとともに、土壌微生物学的調査を行うことで、クラスター状の根がもたらす土壌生態系におけるインパクトを明らかにすることを目的とする。
今年度は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて全く渡航できない状況になったため、昨年度までに採取した試料の分析を進めるとともに、日本において栽培試験を実施した。葉身のイオンプロファイルについて、昨年度までに西オーストラリアにおいて採取した植物と宮島の貧栄養土壌に生育するヤマモガシやヤマモモなどと比較したところ、西オーストラリアの植物の方が多量栄養素の濃度が概して低い傾向にあった。アルミニウムはヤマモガシなど日本在来植物において集積するものがある一方、西オーストラリアの植物では高い濃度を含有するものはなかった。西オーストラリアで採取した植物のうち、一部の根圏土壌の群集構造解析を行った結果、全てのヤマモガシ科植物で菌根菌の存在は認められず、菌根菌に依存せずにリンを吸収していることが推察された。また、これまでにシロバナルーピンのクラスター根で特異的に多くなることが示唆されているBurkholderia属細菌がヤマモガシ科植物においても多くなることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の成果として、複数の関連論文や学会発表につながっており、順調に進展している。ただし、新型コロナウィルス感染症の影響により予定通りの渡航計画が消化できず、研究の完結に至っていない。今後web会議などにより共同研究、論文執筆を進めるとともに、終息後に集中的に渡航し、共同研究を進める考えである。

今後の研究の推進方策

当面の間は国内においてこれまでに得た分析データおよび昨年度栽培試験を行った植物体の解析を進め、web会議を行って相互に意見交換を行うことで、共同研究論文の執筆を進める。
以下の滞在計画は状況が許せば行う考えである。 西オーストラリア大学には、令和3年度には2ヶ月程度滞在したく考えている。滞在期間中には、これまでに分析した植物種のイオノーム解析の結果を基にヤマモガシ科植物やクラスター根形成種の周辺植生への影響についての考察を行うための実験を実施する。 ホーヘンハイム大学には、令和3年度には1ヶ月程度滞在したく考えている。滞在期間中には根圏土壌の土壌微生物群集構造解析を進める。さらに、ザイモグラムの方法を具体的に適用した実験を土耕栽培で実施し、酵素活性と微生物群集構造の関係を明らかにする。
日本では引き続き土耕栽培している植物を用いて同じ土壌環境下で生育した日本原産、オーストラリア原産のクラスター根を形成するヤマモガシ科植物の根圏土壌における微生物群集構造について、アンプリコンシーケンス解析を行うとともに、根圏におけるホスファターゼ、キチナーゼなどの有機化合物加水分解酵素の土壌酵素活性の測定を実施し、クラスター根の特性について評価を行う。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Formation of dauciform roots by Japanese native Cyperaceae and their contribution to phosphorus dynamics in soils2020

    • 著者名/発表者名
      Masuda Genki、Maruyama Hayato、Lambers Hans、Wasaki Jun
    • 雑誌名

      Plant and Soil

      巻: 461 ページ: 107~118

    • DOI

      10.1007/s11104-020-04565-6

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Leaf manganese concentrations as a tool to assess belowground plant functioning in phosphorus-impoverished environments2020

    • 著者名/発表者名
      Lambers Hans、Wright Ian J.、Guilherme Pereira Caio、Bellingham Peter J.、Bentley Lisa Patrick、Boonman Alex、Cernusak Lucas A.、Foulds William、Gleason Sean M.、Gray Emma F.、Hayes Patrick E.、Kooyman Robert M.、Malhi Yadvinder、Richardson Sarah J.、Shane Michael W.、Staudinger Christiana、Wasaki Jun, et al.
    • 雑誌名

      Plant and Soil

      巻: 461 ページ: 43~61

    • DOI

      10.1007/s11104-020-04690-2

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Complementarity of two distinct phosphorus acquisition strategies in maize-white lupine intercropping system under limited phosphorus availability2020

    • 著者名/発表者名
      Dissanayaka D.M.S.B.、Wasaki Jun
    • 雑誌名

      Journal of Crop Improvement

      巻: 35 ページ: 234~249

    • DOI

      10.1080/15427528.2020.1808868

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Recent insights into the metabolic adaptations of phosphorus-deprived plants2020

    • 著者名/発表者名
      Dissanayaka D M S B、Ghahremani Mina、Siebers Meike、Wasaki Jun、Plaxton William C
    • 雑誌名

      Journal of Experimental Botany

      巻: 72 ページ: 199~223

    • DOI

      10.1093/jxb/eraa482

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 低リン耐性植物ハケアが形成するクラスター根の遺伝子発現解析2020

    • 著者名/発表者名
      山田 大綱、西田 翔、和崎 淳
    • 学会等名
      日本土壌肥料学会2020年度岡山大会
  • [学会発表] 中国地方の貧栄養な花崗岩質土壌に生育する木本植物の養分吸収特性2020

    • 著者名/発表者名
      和崎 淳、岡村 惟史、山田 大綱、愛原 健司、坪田 博美、渡部 敏裕
    • 学会等名
      日本土壌肥料学会2020年度岡山大会

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公開日: 2021-12-27  

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