研究課題
今年度は8ヶ月間アメリカに滞在し、野外観測、野外実験、室内実験によるデータ収集と海外研究者とのネットワーク形成、研究議論、論文執筆を行った。野外観測において、Fair Hill Natural Resources Management Area 内のアメリカブナ(<i>Fagus grandifolia</i>)の林に樹冠通過雨の観測プロットを設定した。林外に1台、林内に18台のレーザー雨滴計を設置し、雨滴計測と雨量採取を同時に行った。落葉の前後で合計7つの降雨イベントを得た。採取した雨の安定同位体比分析、溶存体炭素分析、質量分析、微生物群集分析を行った。野外実験・室内実験は、アメリカブナの苗木を使って行った。8月の訪問時の議論で実験方法を確立した。枝葉の濡れ方の季節変化を明らかにするために、9~12月に毎月苗木を送付し、コロラド大の共同研究者が実験を行った。野外実験では、人工降雨装置で3種類の降雨強度及び雨滴粒径分布を再現し、与える雨の違いと葉の有無によるアメリカブナの雨水貯留量の差異を調べた。室内実験では、枝に水滴を人工的に滴下させ、水滴の粒径・落下高・滴下間隔の違いに応じた枝の濡れ方と枝からの滴下水滴の発生過程の違いを調べた。実験後、枝葉の表面の撥水性、走査電顕による物理構造撮影を継続した。以上のデータは、樹冠の垂直構造を雨がどう通過してきたのかを推定するのに必要なデータとなる。初年度はデータ取得がメインであり、解析はまだ進んでいない。ネットワーク形成においては、10月にデラウェア大の共同研究者が主催したEttersburg Ecohydrology Workshop(ドイツ)に出席し、世界各国の著名な森林水文学者と交流した。新たな国際共同研究の展開や現在の研究の深化を推進した。
1: 当初の計画以上に進展している
年度当初の予定通りデータ収集に集中し、今後の解析やモデル化に向けたデータ収集に成功した。海外共同研究者の人脈により、当初予定していなかった新たな共同研究者を加えて樹冠通過雨に存在する微生物群集の分析を加えた。これにより、樹冠通過雨の生成プロセスだけでなく、樹冠通過雨の成分比の違いを活用した、樹冠通過雨を駆動力とする微生物群集の移動経路の解明にせまることができる。当初予定していなかった国際ワークショップにより、新たな海外研究者とのネットワークを作ることができた。
メール、ビデオチャット、日本への招へい、同じ国際会議への参加などにより、海外共同研究者との議論を継続し、収集データの解析と論文化を進める。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 7件)
Advances in Water Resources
巻: 121 ページ: 472~479
10.1016/j.advwatres.2018.08.015