脳機能を担う神経回路の発達においてNMDA型グルタミン酸受容体NR3A(GluN3A) は重要な役割を持つが、発現部位やその分子機構に不明な点が多く解明が期待されている。研究代表者はH29年度から開始した基課題において、NR3A受容体は他の受容体とは全く異なり、特定の入力経路・細胞の非シナプス性結合に選択的に集積することを見出した。2年目となるH30年度は、研究代表者が、受け入れ先であるYale大学の研究室に滞在して共同研究を行った。具体的には複合体構造をとるタンパク質および膜タンパク質複合体の大きさや分子種を調べるために有用な手法であるBN-PAGE法や免疫沈降法などの生化学的手法を用いた複合体解析により、NR3A受容体複合体の構成分子の同定に取り組んだ。その結果、NR3AチャネルのアセンブリにはNR1サブユニットが必須であることがわかったが、共局在するKv4.3は複合体形成には関与していないことが明らかになった。またNR1コンディショナルノックアウトマウスにおいてはNR3A受容体の特徴的な集積が認められないことがわかった。また、このNR1コンディショナルノックアウトマウスにアデノ随伴ウイルス(AAV)を用いてNR1を導入することにより、NR3Aの選択的集積が回復することも明らかとなった。今後はNR3Aの変異体を作成し、マウス小脳に導入して、NR3A受容体選択的集積に重要な機能ドメインの同定しや機能変化を検討する予定である。
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