天然資源には、自然由来の放射性物質が含まれており、その利用によって外部被ばくおよび内部被ばくが引き起こされる。自然放射性核種を多く含む金属鉱石について、国際原子力機関は管理のための基準を設定しようとしているものの、依然として規制の根拠となる情報は乏しい。もし産業用で使用されている金属鉱石が高い放射能濃度を有していた場合、その利用によって意図せずに作業者や公衆が高いレベルで被ばくする恐れがあり、被ばくの実態の解明が急がれている。本研究は、自然放射性核種を多く含む金属鉱石による一般作業者や公衆の被ばくの実態を明らかにすることによって、不要な放射線被ばくリスクから作業者や公衆を護ることにつなげるものである。 アジアには豊富な金属資源が眠っており、他の様々な先進国が支援して開発が進められている一方で、アジアの途上国ではそれによる放射線被ばくについて安全を護る思想が十分に培われていない現状がある。国際的な問題をより喫緊の問題として抱えるアジア地域において現地機関(フィリピン原子力研究所)と共同で本研究課題を進める計画である。 本年度は、新型コロナウィルスの流行拡大により、当初予定していた計画(現地で空間線量率や線量評価に関するデータ等を現地研究者らとともに解析する)を実施することが困難であったため、付随する天然資源の濃度調査を行った。来年度は、新型コロナウィルスの状況を考慮しながら、引き続きサンプルの調性や測定等を進める。
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