新型コロナウイルス感染拡大のため、所属機関の要請によって海外渡航ができなくなった。また、受け入れ予定の海外研究機関にも日本からの研究者受け入れが中止になった。そのため、当初予定していたデンマークと米国の共同研究者のもとへの渡航し、現地で実験を実施ができなかった。このような事態に対応するため、実験を日本で実施し、その結果をオンラインで情報交換することによって共同研究を実施した。すなわち、実験結果を海外共同研究者とデータ解析、解釈をオンラインでおこなった。また、海外研究者に実験の一部を実施してもらい、その実験データを共有して、相互に実験データを比較する作業をオンラインでおこなった。その結果、共同研究成果として、HNRNPH1による核内長鎖ノンコーディングRNAの分解制御という新しい仕組みをRNA Biology誌に発表できた。 この研究では、核内長鎖ノンコーディングRNAとして有名なNEAT1の分解をHNRNPH1が制御していることを発見した。さらに、HNRNPH1によるNEAT1分解では、HNRNPH1とMTR4(核内RNA分解において重要な役割を担うRNA縁ケース)との物理的相互作用が重要であることを発見した。また、HNRNPH1-MTR4経路によるNEAT1分解制御の生理的意義を探った結果、NEAT1の発現制御がIL8サイトカインの遺伝子発現を制御することを発見した。この結果は、核内RNA分解の制御が自然免疫応答の制御にとって極めて重要な役割を果たすことを示すものであった。また、HNRNPH1というRNA結合タンパク質が核内RNA分解にかかわることを初めて示す結果でもあった。
|