本年度は細胞活動が筋の形成、発達にどのような役割を果たすかを、光応答性イオンチャネル(ChR2(H134R))を筋特異的に発現する遺伝子改変マウスを用いて検討した。骨格筋の萎縮は、サルコペニア、脊髄損傷など外傷による不活動、除神経、低栄養などによって起こる。哺乳類の筋線維は遅筋線維(タイプⅠ)と速筋線維(タイプⅡ)に大別され、廃用性萎縮ではタイプⅡよりもタイプⅠの方が速く萎縮しやすく、組織により減少量や減少率、速度に違いがあることが知られている。神経切断による除神経を行ったヒラメ筋と長指伸筋について萎縮の経時変化を調べた。除神経後7日目、14日目に組織を取り出して免疫蛍光染色すると、長指伸筋では、通常タイプⅠよりも大きい断面積を持つタイプⅡが萎縮を起こし、14日目ではタイプⅠと同等もしくはそれよりも小さくなった。一方、タイプⅠ線維は線維径や数の減少はほとんど見られなかった。タイプⅠ線維が優位の筋であるヒラメ筋ではタイプⅠで7日目から萎縮が見られ、14日目には断面積の著しい減少が認められた。タイプⅠ線維の萎縮が顕著に認められたヒラメ筋を単離して組織培養を行った後、収縮力を測定した。筋組織表面に設置したファイバーを通して青色光を照射すると同期した筋収縮が誘発され、光パルスの周波数、持続時間、強度に対する依存性が見られた。24時間培養後の収縮力は単離直後の約39%まで減少した。今後、刺激強度や頻度を調節して神経活動を伴わない筋活動を引き起こさせ、筋重量や線維径の変化、萎縮の抑制に作用するか調べる。
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