超高齢化社会を迎えた我が国において健康寿命を伸ばすことが喫緊の課題の一つとなっている。骨格筋の量や質を維持して、活動可能な体を維持することは健康的な日常生活を送る上で重要である。骨格筋線維は活動量や活動時の負荷の増大に対して肥大、活動量や負荷の減少に対しては萎縮が引き起こされる。神経刺激やホルモン刺激、収縮様式の異なる収縮刺激、受動的な伸張刺激に応じて筋線維の大きさや筋組成が変化して適応する。本年度は海外共同研究先で行った培養筋組織モデルを用いた筋機能維持機構の解析を引き続き遂行できるように遺伝子改変マウスの譲受を予定としていたが、新型コロナウィルス感染症対策により、搬入計画の大幅な変更を余儀なくされた。年度終わりに所属機関に搬入することができ、現在胚操作によるクリーニングおよび繁殖を行っている。単離骨格筋の筋力学特性を評価するための機種選定および仕様の検討を行い、遺伝子改変マウスの準備が整い次第、実験を遂行できる準備を進めた。筋特異的に光応答性イオンチャネル(ChR2(H134R))を全身性に発現するマウスは青色光を照射すると筋収縮が直接的に誘発される。摘出した筋組織表面に照射すると光の周波数、持続時間、強度に依存するために正確に筋収縮をコントロール可能であることを確認した。今後は昨年度までに培養条件を検討した単離したヒラメ筋のin vitro組織培養系を用いて、神経活動を伴わない収縮刺激が筋重量や線維径の変化、萎縮の抑制など骨格筋の生理的状態維持にどのように働くかについて解析を進める。
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