研究課題/領域番号 |
17KK0165
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
前川 知樹 新潟大学, 医歯学系, 研究教授 (50625168)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | DEL-1 / 抗炎症 / 歯周炎 / 肺炎 / 粘膜免疫 / 骨免疫 / 骨再生 / 骨代謝 |
研究実績の概要 |
2020年7月6日の米国への渡航へ向けて,4月より当該研究室にて行う研究計画のプロトコール作成,動物使用実験の申請等を事前におこなった.それにより予定されている1年間の限定的な期間でのスムーズな研究推進が可能となった.具体的には,渡航先で行う実験計画書および動物使用実験倫理書類等の米国での法律に沿った研究計画書の立案をおこない,遺伝子組換え実験,動物実験の承認を得た.また,研究室PIとは綿密に連絡を取り合い,研究計画に改変を加えた. 2020年7月に予定通り米国ペンシルベニア大学へ渡航し,DEL-1に関する研究(基課題若手研究(A)(16H06272)による研究)を推進できる計画を遂行した.すなわち,DEL-1の抗炎症作用と骨免疫調節,肺炎における好中球浸潤と組織再生を促す免疫調節作用,さらに歯周病の骨破壊や組織修復エラー抑制への展開への可能性が高まった.同研究成果は,国際英文雑誌に投稿し現在Revise中である.さらに,これら得られた知見からDEL-1の応用展開を目指し,DEL-1が骨芽細胞に与える影響も解析した.DEL-1はこれまでの破骨細胞や抗炎症作用の他にも,再生に関わる分子であることが明らかとなり,成果は国際英文雑誌に受理された(J Bio Chem, 2020).また,Del-1研究は我々の研究が世界でリードしていることから,同結果を本国際共同研究にてさらに昇華させることを考え,米国ペンシルベニア大学で独自に所持しているDEL-1のドメインごとの遺伝子欠損マウスを用いた研究も併せて推進した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
事前の準備が奏功したために,ペンシルベニア大学に渡航後すぐに実験を開始することができた.本年度に予定されていたDEL-1と歯周炎および肺炎に関する粘膜疾患での役割解明実験の他にも,DEL-1が骨芽細胞に与える影響をさらに加えることができ,国際共同論文として国際英文雑誌に発表することができた(J bio Chem, 2020).さらに,渡航後8ヶ月の研究成果によって当初予定の研究が想定以上に遂行できたことで,予定よりも早く成果をまとめ,国際英文雑誌に投稿することができた.今後は,DEL-1が生体において減少していることおよび間葉系幹細胞への作用効果が認められたことから,予定を繰り上げて新しい計画も試行する予定である.よって,当初の計画以上に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は,米国での新型コロナウイルスへの対応のために,実験期間または内容が制限を受け続ける可能性が高い.しかしながら,実行可能な限りは,予定されている研究を迅速に遂行することを目指す.まず初めに,血管内皮細胞と破骨細胞を対象としたDEL-1誘導メカニズムを解明する.DEL-1の作用受容体および下流でのプロモーターはすでに同定することができている. 続いて,DEL-1は老化により産生が減少することと,老化による再生能や抗炎症能が低下することがわかってきていることから,令和2年度ではこれらの関連性を見出すために,老齢マウスを用いて,肺炎・歯周炎を対象とした解析を行う.すでに,令和元年度にDEL-1が間葉系肝細胞(MSC)の分化・増殖に影響を及ぼしている知見が得られているために,2つの疾患モデル,特に骨と組織修復・再生に関連する因子・細胞の動態を確認する. 実験に際し,新型コロナ肺炎(COVID-19)に対応した行動を心がける.
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