研究実績の概要 |
2019年7月6日に米国ペンシルベニア大学へ渡航し,DEL-1に関する研究(基課題若手研究(A)(16H06272)による研究)を推進できる計画研究を開始した.昨年度より当該研究室にて行う研究計画のプロトコール作成,動物使用実験の申請等を事前におこなっていたためスムーズな研究遂行が可能となった。 米国での共同研究では,DEL-1の抗炎症作用と骨免疫調節,肺炎における好中球浸潤と組織再生を促す免疫調節作用,さらに歯周病の骨破壊や組織修復促進への展開研究をおこなった.DEL-1の骨代謝,特に骨芽細胞に作用する詳細なメカニズムを解明することができ,成果は国際英文雑誌に受理された(J Bio Chem, 2020).さらにDEL-1を構成するドメインのいくつかを欠損したマウスを用いた実験により,DEL-1の新規機能が明らかになりつつある(国際英文雑誌に投稿中). 特にDEL-1と歯根膜中に存在する間葉系幹細胞(aSMA陽性細胞)との関連性について,in vivoマウスモデルおよびin vitroにおける裏付けデータを得ることができた.これら米国のラボが独自にもつマウスを使用することが可能となったことで,研究が飛躍的に進んだ.当初の目的であったDEL-1と破骨細胞による骨吸収抑制作用機構解明の他に,再生医療への展開の可能性が見出せたことが大きな収穫であったと考えている. 渡米後,半年ほどで新型コロナ流行によるロックダウンおよびラボの一時的閉鎖による混乱もあったが,最小限の時間で最大限の成果があげられるように取り組んだ.予定の1年よりも長い滞在になってしまったが,オンラインミーティング等を活用して研究の質を担保した良質な在外研究になったと考えている.
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