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2018 年度 実施状況報告書

ハイスループットシークエンサーによる網羅的ウイルス検出法の確立とその臨床応用

研究課題

研究課題/領域番号 17KK0170
研究機関長崎大学

研究代表者

黒崎 陽平  長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (40415443)

研究期間 (年度) 2018 – 2019
キーワードウイルス / 出血熱 / 次世代シークエンス / ナノポアシークエンス / メタゲノム / 診断 / 分子疫学
研究実績の概要

本年度は、英国公衆衛生局(Public Health England, PHE)と共同で、次世代シークエンサーおよび最新のナノポアシークエンサー技術を用いたウイルスゲノム配列の同定法、及びメタゲノム解析法による臨床試料中からの網羅的ウイルス検出法の開発を行った。
ウイルスゲノム配列の同定では、致死性の出血熱ウイルスの一つであるダニ媒介性のクリミア-コンゴ出血熱ウイルス(CCHFV)を対象にナノポアシークエンサーMinIONを用いたゲノム配列同定法を開発した。CCHFVはアフリカ、ヨーロッパ、アジアにかけ広い流行域を示し、分離株は地域によって多様な塩基配列を持つことが知られる。そこで、CCHFV分離株共通のコンセンサスプライマーを用いたmultiplex tiling PCRによるターゲットゲノム増幅を行い、その増幅産物を用いてナノポアMinIONによるアンプリコンシークエンスを行った。感染培養上清から抽出されたRNAを試料に用いた場合、今回検証した異なるlineageのウイルス株(計6株)全てにおいて、リファレンス配列をほぼ100%カバーする出力リードが得られた。一方、CCHFV陽性ヒト血液およびマダニ由来の抽出RNAを試料に用いた場合、リファレンス配列のー部の領域で極端に低カバレッジになる事象がみられた。
メタゲノム解析による網羅的ウイルス検出法の開発では、Sequence-independent single primer amplification (SISPA)法によるランダム全ゲノム増幅を行い、その増幅産物をナノポアMinIONもしくはイルミナ次世代シークエンサーにて解析する方法について検討し、RNAウイルスの検出に最適なSISPA法を決定した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の研究計画通り、英国公衆衛生局PHEを5カ月訪問し、共同研究を実施した。研究内容については事前に相互確認し、渡航後速やかにPHEとの共同研究を進めることができた。
PHEでは次世代シークエンスおよびナノポアシークエンスを用いたウイルスゲノム解析の経験がある研究者がおり、エボラウイルスやクリミア-コンゴ出血熱ウイルスをはじめとする出血熱ウイルスに関して多くの研究実績を残している。その研究基盤の下、5カ月の渡航期間中に出血熱ウイルスに対するシークエンス法の開発を共同で進め、その確立に着実に近づいている。本邦では扱うことができない出血熱ウイルスに関連する研究試料を用いて、新たに開発したクリミア-コンゴ出血熱ウイルスのシークエンス法の有用性を評価することができた。更に、共同研究者が有する世界的な研究ネットワークを活用し、次年度は新たに開発したシークエンス法を出血熱流行国にて現地評価を実施する計画である。本研究が最終的に目指すハイスループットシークエンス法による網羅的ウイルス検出法の臨床活用を評価する道筋をつけることができた。以上より、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。

今後の研究の推進方策

ナノポアシークエンサーMinIONによるCCHFVシークエンスでは、CCHFV陽性ヒトおよびマダニ試料を用いた場合、一部の領域で低カバレッジになる課題が残された。この事象はmultiplex tiling PCRにおいて特定のプライマーペアの増幅効率が低いことに起因すると考えられた。次年度は、現行のmultiplex tilling PCRによるCCHFVゲノム増幅法についてプライマー配列および反応条件を改良する。更に、バイオインフォマティクス技術を駆使し、得られたデータからウイルスの変異解析、系統解析を行う。ヒトおよびマダニ由来のCCHFV等疑い試料についてメタゲノム解析を実施し、疑い例に感染するウイルスの検出、および試料中のVirome解析を行う。
ナノポアシークエンサーによる出血熱ウイルスのゲノム配列同定法の臨床的有用性を評価するため、タジキスタン共和国CCHFリファレンスラボと共同で、CCHF疑い試料についてナノポアMinIONを用いたターゲットゲノムシークエンス、およびメタゲノムシークエンスを実施する。得られたデータよりCCHFVのゲノム配列を同定し、そのシークエンス精度を評価する。同定されたウイルスゲノム配列を使い、CCHFV分離株のゲノム性状と伝播動態を明らかにする。ハイスループットシークエンサーとそこから得られるウイルスゲノム情報がエボラウイルスやCCHFVをはじめとする伝播性が高く致死的な出血熱ウイルスの感染症対策にいかに活用できるか考察し、そのシークエンスデータの有効活用を提案する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019 2018

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)

  • [学会発表] Development of an RT-LAMP assay for the detection of Lassa viruses in southeast and south-central Nigeria2019

    • 著者名/発表者名
      C. Pemba, Y. Kurosaki, R. Yoshikawa, I. Nwafor, O. K. Oloniniyi, S. Urata, M. Sueyoshi, V. R. Zadeh, M. O. Iroezindu, N. Ajayi, C. M. Chukwubike, N. M. Chika-Igwenyi, A. C. Ndu, D. U. Nwidi, Y. Maehira, U. S. Unigwe, C. K. Ojide, E. O. Onwe, J. Yasuda
    • 学会等名
      Lassa fever First International Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] DIFFERENT EFFECTS OF TWO MUTATIONS ON THE INFECTIVITY OF EBOLA VIRUS GLYCOPROTEIN IN NINE MAMMALIAN SPECIES2018

    • 著者名/発表者名
      Y. Kurosaki, M. T. Ueda, Y. Nakano, J. Yasuda, Y. Koyanagi, K. Sato, S. Nakagawa
    • 学会等名
      The 2018 Negative Strand RNA Virus meeting
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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