研究実績の概要 |
近年, 海洋生物を創薬シーズとした研究が急速に進展しており, 今後益々重要な役割を担ってくると考えられている. 申請者は, 海洋天然物化学で著名なスクリプス海洋研究所のWilliam Fenical教授の研究室にて, グループ内の共同研究者によって各種抗がん活性を評価して頂いた海洋細菌培養液5株の二次代謝産物を解析した. まず, 最適な海水濃度を確認するため, 0, 25, 50, 75, 100%と振った海水培地による予備検討を行い, 生育が良好だった75%海水培地による生産培養を10-20 Lのスケールにて実施した. フィジーの海底泥より分離された放線菌Micromonospora sp. CNS697株においては, 主にstaurosporine類の生産を確認し, LC/MS解析より興味深い微量成分の生産を検出している. フィジー近海水深30 mより採取された細菌Bacillus sp. CNS660株からはmacrolactin AとSを単離し, HPLC-DAD分析よりテトラエン部位 (365 nmのみに吸収帯) を有する新規macrolactin類の生産を確認している. Streptomycesに属する放線菌CNS691株の20 L培養と抽出実験も終えており, 得られた抽出物のLC/MS解析より, 多様な成分の生産を確認している. AJS044株及びAJS183株は, ラホヤ海岸の桟橋近海より分離された希少な海洋細菌で, 単独培養での物質生産能を高くないと考えられたが, CNS697株とCNS660株との共培養実験にて新しい成分の生産が認められた. また、ラホヤ海岸中心に採取した海洋資源より, 海洋生物に内在する11株の海洋糸状菌の分離にも成功している.
|
今後の研究の推進方策 |
今回検討を実施した5株の海洋性細菌と新たに分離した11株の海洋糸状菌においては, Fenical教授の許可のもと, 日本での研究の継続を承認して頂いている. 今後, 申請者が主に遂行している特殊培養条件との組み合わせを適応し, 新たに生産される代謝産物の解析を予定している.
|