研究実績の概要 |
海洋に由来する生物は医薬探索の供給源として重要な役割を担っており, 依然として有用な生物活性物質の発見が期待されている. 本課題では, 海洋微生物に様々な培養条件を適応することで新たな二次代謝産物の創出を目指した. 令和元年度においては, 前年度にラホヤ海岸で採取した11株の海洋糸状菌に加え, 令和元年9月に沖縄県にて分離した11株の海洋糸状菌を用いて種々の培養条件を検討し, 得られた培養液ライブラリーの生物活性評価とHPLC-DAD分析を行った. 検討の結果, ラホヤ海岸の海藻より分離したTMPU1908株 (海水培地) の培養液中にRhizopus oryzaeに対する抗真菌活性が見られた. 同時に分離されたTMPU1905株には顕著な生物活性が確認されなかったが, 臭化ナトリウム (NaBr) を添加した培養条件にて特異的なピークの生産が検出された. 沖縄県万座毛で分離した6株のうち, TMPU1917, 1918および1919株のNaBr添加培養液にのみCandida albicansに対する抗真菌活性が認められた. 加えて, TMPU1917株 (海水培地) と1919株 (NaBr添加培地) では抗Cryptococcus neoformans活性が, TMPU1921株と1922株 (共に海水培地) では抗R. oryzae活性が確認された. これら菌株の大スケールによる培養実験はすでに終了しており, 順次二次代謝産物の精製を進めている.
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