本研究は、各コホートのベースライン時(日本人(東温スタディ)では、2009-12年、英国人(Whitehall II Study)では、1991-94年)、フォローアップ調査(日本人、英国人共に、毎5年)における質問紙調査と循環器発症・死亡登録サベーランスシステムを用いる。質問紙調査では、社会的サポート・ネットワーク、ワークライフバランス、社会経済状況等を含む社会的要因を把握している。また、同時に、動脈硬化(頸動脈エコー、CAVI、脈波伝播速度(PWV)等)指標、古典的危険因子(血圧、血清脂質、血糖、腎機能、喫煙、飲酒、眼底、心電図所見等)、生活習慣要因(栄養、運動習慣、睡眠等)、自律神経機能、認知機能、運動機能、血清バイオマーカー(炎症、抗酸化、栄養、心機能等)、唾液中のストレス反応性バイオマーカー(コルチゾール、αアミラーゼ)を把握している。 これまで、日英の各コホートにおいて、それぞれ異なる唾液中のストレス反応性バイオマーカー(日本人コホート:αアミラーゼ;英国人コホート:コルチゾール)による動脈硬化への影響について検討してきた。しかし、αアミラーゼは、コルチゾールやテストステロンといったストレスホルモンとは、ストレスに対する反応性が異なり、循環器疾患に関与する機序に違いがある可能性が指摘されている。そこで、日本人(東温スタディ)集団の一部対象者(60歳以上の男女)の保存唾液を用いて、テストステロン、コルチゾールを測定し、αアミラーゼとテストステロン、コルチゾールとの相関や、それぞれのストレス反応性バイオマーカーの動脈硬化への影響の差異について検討し、UCL共同研究者と共に論文化を進めている。
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