研究課題/領域番号 |
17KK0176
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
大谷 郁 東海大学, 医学部, 准教授 (30377410)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | ウェルシュ菌 / 毒素産生調節 / 遺伝子発現調節 |
研究実績の概要 |
ウェルシュ菌は芽胞形成嫌気性桿菌で多数の毒素を産生しその協調作用でガス壊疽などの特徴ある病態を形成する。また芽胞形成時には腸管毒素を産生し、食中毒の起因菌ともなる。ウェルシュ菌の毒素産生調節は細胞間情報伝達を含む複雑な機構で行われている。本年度は、共同研究で行なったRNA-seqとマイクロアレイの実験データ解析より明らかとなった、調節RNAに注目して研究を行った。この調節RNAはゲノム上の約1.5kbpのinter genic region(IGR)に存在し、ORFはないもののRNA-seqにより転写が確認され、またNorthern解析によりその転写の確認がとれた。これまでの解析によりこの領域は既知の細胞間情報伝達システムの下流に存在することが示唆され、この領域を過剰発現することにより毒素産生性に変化が出ることから、この領域は本菌の毒素産生に関与する新規調節RNAであることが示唆された。また既知の複数の二成分制御系システムによって調節されることも示唆された。IGRの上流に存在するORFは毒素遺伝子に対して新規調節RNAと同様の作用を持つことが実験により示唆された。この結果より、IGRの上流の遺伝子についてもその機能を解析するためタンパク精製の準備をはじめた。さらにIGRの下流には二成分制御系も存在することが明らかとなったため、現在、この周辺の領域の遺伝子について、新規調節RNAとの関連について解析をすすめている。本菌においてはこれまでに毒素産生調節を行う複数の毒素産生調節に関与する調節RNAが存在することが明らかとなっているが、これらの調節因子との関係も現在解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海外で使用した菌株の輸入の手続き等に時間がかかり、さらに病原菌株のため実際の輸送にも時間がかなりかかり、到着した時には輸送した半分以上の菌株がダメになっていた。結局、大元の株を再輸送してもらったものの、変異株をもう一度作製し直すこととなり、計画に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
帰国後にオーストラリアで行った条件での実験を日本でも再現できることが確認できたため、今後はこれまでに作製したすべての変異株を用いて毒素遺伝子、芽胞形成関連遺伝子の発現パターンや毒素産生性や芽胞形成効率についても解析を行う。また新規調節タンパクの精製を行い、調節RNAとの関係をゲルシフト等を用いて解析を行う。また調節RNAについてはその転写領域や転写されるタイミング、また、既知の調節遺伝子との関連を詳細に解析する。これらの解析を通して、この新規の調節因子が病原性、芽胞形成発現にどのように関わっているかを明らかにしていく。
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