研究課題/領域番号 |
17KK0179
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
塩井 成留実 (青木成留実) 福岡大学, 理学部, 助教 (50510187)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2021
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キーワード | 出血毒金属プロテアーゼ / toxinology / anti-venom antibody / inhibitor |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、国際共同研究より世界で多くの犠牲者を出す毒ヘビ咬傷被害を社会情勢および学術的な研究背景に潜む問題点を具体化すること、また、ヘビ毒研究の進展させることを目的としている。 2020年1月以降、COVID-19の影響により2019年度の計画に遅れが生じはじめ、また、2020年度は計画していた渡航予定(2020年7月19日~2020年9月30日, 2020年12月22日-2021年3月31日)が長引くパンデミックによりキャンセルになった。そのため2020年度は渡航先での研究活動が全くできなかった。2020年度は、世界情勢に臨機応変に対応し、以下の3点を中心に本研究を実施した。 ・毒素阻害剤評価実験については、ファージディスプレイ法でスクリーニングした遺伝子配列を基盤とし、大腸菌タンパク発現系を用いて、組み換え体VHH抗体の量的調製を行った。また、ヘビ毒に対する毒素活性中和実験を動物実験を用いて行った。現在、強い結合能を持つが、毒素阻害能が弱かった抗体の変異体を作成して、さらなる改善を行っている。 ・In silico解析(MOEシステム)を導入し、分子(インヒビター)デザイン、物理化学的な物性評価、標的毒素との結合性など、コンピューターシミュレーションを行った。 ・へび組織のサンプリングと初代培養については、日本国内においてサンプルリングを行った。初代培養の専門家から様々な意見を集めたが、血球以外の細胞は、増殖することができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の影響が2020年度も続くことを考慮し、2019年度の実施状況報告書に提案した実験計画は実施できている。しかしながら、以下の2点が理由となり、国内外の進捗状況はやや遅れている。 ・日本国内のlock downの影響 自宅勤務に加え、授業形態の変更による準備、共通研究センターの利用方法の変更(lock down中は使用できないなど)等、不安定な社会状況が律速となり、研究活動時間の確保や実験計画すら立てることが困難であった。2020年度後半からは、大学での教育や研究の状況が安定してきて、おおむね順調に推進できた。 ・各国の期間が異なるLock downの影響 本事業(研究種目:国際共同研究加速基金(国際共同研究強化))は、基本的には国外での積極的な活動により当該研究のプラットフォームの構築や格段な推進であったが、その点については各国の社会状況が異なり、深刻な状況の国々が多かったため、国際活動はほとんどできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の遅れとなっている点は日本国外での活動である。現在の国内外の社会状況(COVID-19を中心に)を考慮すると、ワクチン接種により改善に向かいつつあるが、その状況は国別に大きく異なると予測される。 まずは、シンガポール国立大学への滞在期間中に、すでに保存されている毒ヘビを中心とするサンプルから着手し、2020年1月からの遅れを取り戻す予定である。また、今年度より導入したIn silico解析の有効性を高め、分子デザインや評価の効率を高めるよう計画している。 また、これまでの研究成果の発表は、当該研究分野の国際学会は昨年度の延期から次期開催は、Web開催となっている。開催される際は積極的に学会発表を行い、さらにlock down期間中にまとめた論文の投稿やデータの公表についても同時に進めていく予定である。
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