研究課題/領域番号 |
17KK0179
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
塩井 成留実 (青木成留実) 福岡大学, 理学部, 助教 (50510187)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2022
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キーワード | 出血毒 / ヘビ毒毒素 / 酵素阻害タンパク質 / 酵素阻害ペプチド |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、国際共同研究より世界で多くの犠牲者を出す毒ヘビ咬傷被害を社会情勢および学術的な研究背景に潜む問題点を具体化すること、さらに、ヘビ毒研究を進展させることを目的としている。具体的な取り組みは、世界の毒生物被害の現状把握とその治療法についての情報を集め、具体的な解決策を検証する、毒ヘビ咬傷治療薬開発におけるプラットフォームを構築する、有毒生物研究の活性化となる毒素生産細胞株を樹立するの3点としている。 新型コロナウィルスの影響により2020年度は計画していた渡航先での研究が全く実施できず、その影響は2021年度まで続いた。また、新型コロナウィルスのオミクロン株の感染状況の拡大により、国内外での組織検体のサンプリングは当該年度も実施ができなかった。しかしながら、幸いにも2021年11月に渡航先海外機関(シンガポール国立大学)の受け入れ許可がおり、2021年度は11月中旬~2022年3月末の期間で、海共同研究者と毒素阻害剤についての基礎研究を推進した。その具体的な研究内容は、以下の通りである。 ・毒ヘビが体内で生産する毒ヘビ毒素阻害タンパク質の発現系の構築に成功し、その特異的結合毒素の同定を行った。さらに、変異体を作成し、特異的に結合する毒素の阻害機構の解明を行った。 ・出血毒タンパク質の酵素活性には金属イオンを必要とする。その毒素活性に必須な金属イオンと特異的に結合するペプチドを数種類デザインし、そのイオン捕獲評価と毒素活性阻害評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、新型コロナウイルスの影響が続くことを考慮した研究計画を提案し、その内容は予定通りに実施できた。また、2021年度は、当該専門分野の研究会および学会が、Webで開催されたため、それらの国際会議には積極的に参加することができた。本研究は、基本的には国外での積極的な活動により当該研究のプラットフォームの構築や格段な推進であるが、2020年度もまた国外に限らず、国内でも他県への行き来が制限される期間が多くあった。その理由により当該年度は基礎的研究を推進することに集中した。しかしながら、幸運にも下半期の後半には渡航先の受け入れ許可が下り、その滞在中には、マレーシアやインドネシアの研究者と交流する機会を得ることができた。それぞれの国内の様子や研究者の意見を聞くことができ、今後、さらに親睦を深め具体的な共同研究が推進できることを期待する。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、国内でも県外の行き来が制約されることがあり、沖縄県および鹿児島県の南西諸島へのサンプリングが困難であった。そのため、上記の本研究目的(3)毒ヘビ細胞系の樹立のための初代培養の条件検討が、再開できない状況が続いている。 現在の国内外のCOVID-19状況は、ワクチン接種により改善に向かいつつある。来年度は、国内研究者の協力を再度呼びかけ、新鮮なサンプリングと円滑な実験手順により、細胞系の実験を推進する。また、サンプル組織の保存方法なども同時に検討する。 2021年度シンガポール国立大学の滞在期間中の研究成果を発表する機会を国内外問わず多く得ること、また、その研究成果発表を通して、さらにアジアを中心とした国際交流研究を具体的に展開していく。
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