研究実績の概要 |
がん骨転移への対策は、分子標的治療をはじめ多方面からその克服のための研究や治験が進められており、とりわけ放射線療法分野では、去勢抵抗性前立腺癌由来の骨転移がん対応として、アルファ線を利用した塩化ラジウムによる内用療法製剤が近年利用され始め、その効果に注目されている。この製剤は骨に集積する特徴を持ち、一定の疼痛緩和効果や延命効果が示されている一方、その抗腫瘍効果と副作用には個人差が顕著であることを先行文献や代表者の解析で明らかになり、特に内用療法の継続を決定する重要因子の一つとして知られる骨髄抑制の発症においては、生命予後に深く関係するものの、その予測方法や作用機序の詳細は未だ不明である。代表者はがん転移巣と造血組織が局在する骨髄微小環境において、アルファ線の物理化学特性が生物学的効果に複雑な影響を与えていると考え、その詳細の解明を進める。本研究課題の2年度目である2019年度は、ストックホルム大学・放射線防護研究センターにて開始されたマウスモデルを用いた骨髄細胞へのアルファ線照射実験を更に進め、代表者及び共同研究者の所属施設とを往来しながら代謝分析及び臨床解析を主に進めた。具体的には以下の内容である。 ① アルファ線に曝された際の骨芽細胞分化マーカー(Runx2, Osterixなど)をフローサイトメトリーによって評価した ② アルファ線及びX線に曝された骨髄細胞から放出された代謝産物を質量分析によって解析を進めた ③ アルファ線及びX線に曝された骨髄細胞のトランスクリプトーム(mRNA, miRNAなど)解析を進めた ④ 骨転移症例患者について、前立腺癌由来の他、乳癌の場合も比較解析を進めた しかしながら、上記③④については、世界的に問題となっている新型コロナウィルス感染拡大の影響で、解析中断を余儀なくされ、可能な限りの情報を収集したのち、当該年度は帰国した。
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