がん骨転移への対策は、分子標的治療をはじめ多方面からその克服のための研究や治験が進められており、とりわけ放射線療法分野では、去勢抵抗性前立腺癌由来の骨転移がん対応として、アルファ線を利用した塩化ラジウムによる内用療法製剤が近年利用され始め、その効果に注目されている。この製剤は骨に集積する特徴を持ち、一定の疼痛緩和効果や延命効果が示されている一方、その抗腫瘍効果と副作用には個人差が顕著であることを先行文献や代表者の解析で明らかになり、特に内用療法の継続を決定する重要因子の一つとして知られる骨髄抑制の発症においては、生命予後に深く関係するものの、その予測方法や作用機序の詳細は未だ不明である。代表者はがん転移巣と造血組織が混在する骨髄微小環境において、アルファ線の物理化学特性が生物学的効果に複雑な影響を与えていると考え、2019年度末より、渡航先であるストックホルム大学・放射線防護研究センターにてマウス新鮮骨髄細胞モデルを用いたアルファ線照射実験を進め、代表者の所属する弘前大学を往来しながら、メタボローム及びトランスクリプトーム解析を進めた。新型コロナウィルスの感染拡大影響を受け、2020年度から2022年度前半までは所属施設にて解析を進めてきた。昨年度後半に追加実験を渡航先にて再開し、今年度は所属大学へ持ち帰り以下の点の解析を進めた。 ①マウス由来骨芽細胞様細胞が、アルファ線に照射された際のメタボローム解析、トランスクリプトーム解析を進め、とりわけマイクロRNA解析のためのサンプリングとマイクロアレイ解析を進めた。 ②得られた情報とそれに基づく骨髄微小環境内のアルファ線個人差感受性の理論について、国際専門学術誌に投稿した。 以上、最終年度を終えた。学術論文は引き続き編集者及び査読者からのコメントに基づき修正稿を再投稿する。
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