本国際共同研究では、基課題において主にマウスを用いて検討を進めている脂肪酸輸送、脂質代謝関連分子群の発現の差異が、膵臓ランゲルハンス島(膵島)β細胞のインスリン分泌能に及ぼす影響について、2型糖尿病者と非糖尿病者由来の膵島間においても類似の現象を認め、このことが2型糖尿病発症に関与する可能性があるのかについて検討を行った。基課題における耐糖能異常易発性/抵抗性マウスの解析結果を元に、脂肪酸輸送に関与するCD36分子について、ヒト膵島細胞を用いたフローサイトメトリー解析を行い、CD36がヒト膵島においてもβ細胞表面に発現していることを確認した。一方で、マウスやラットの膵島と人の膵島では、膵島を構成する各細胞集団間でのCD36の発現パターンに相違があることを新たに見出した。また、ヒト膵島の遺伝子発現データベースから、膵島におけるCD36の遺伝子発現レベルが肥満糖尿病者で非肥満糖尿病者と比較して高いことを見出し、脂肪酸輸送や脂質代謝に関わる他の分子群の遺伝子発現レベルについても解析を加えた。また、ヒトの単離膵島やヒト由来新規β細胞株を用いて、発現・機能調節がβ細胞内の脂肪酸・脂質動態、細胞内シグナル伝達、インスリン産生能、インスリン分泌顆粒輸送、グルコース応答性インスリン分泌能などに及ぼす影響を評価するための培養実験系を構築し、CD36分子の発現調節や機能調節がインスリン分泌能に及ぼす影響について、in vitroでの検討を加えた。
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