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2017 年度 実施状況報告書

多発性硬化症の新規治療法開発に向けた革新的血液脳関門イメージング法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 17KK0187
研究機関千葉大学

研究代表者

枡田 大生  千葉大学, 医学部附属病院, 特任助教 (10722936)

研究期間 (年度) 2017 – 2019
キーワード多発性硬化症 / 血液脳関門
研究実績の概要

多発性硬化症(MS)は、脳、脊髄、視神経などの中枢神経系に脱髄病変が多発する疾患であり、再発寛解を繰り返しながら神経学的後遺症が蓄積していく原因不明の神経難病である。CD40リガンド(CD40L)はT細胞上に発現しており、レセプターであるCD40と結合して機能する。血液脳関門の構成因子であるアストロサイトや血管内皮細胞にもCD40は発現しているとされるが、近年、CD40Lの可溶型タンパクであるsCD40Lが血液脳関門の破綻に寄与することが報告された(PLoS One.2012;7:e51793)。
我々はこれまでに、①MS患者において、血清および髄液中のsCD40Lが疾患対照より有意に上昇し、血清sCD40Lと血液脳関門破綻のマーカーである髄液/血清アルブミン比(Qalb)が正の相関を示すことから、sCD40LがMS患者において中枢神経系へのリンパ球の浸潤を促進していると予想されることを報告した(J Neuroimmunol 2017;305:102-107)。そのため、MSの動物モデルである実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)を用いて実験を行い、以下の知見を得た。すなわち、②myelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)で免疫したEAEの発症初期にsCD40Lを投与すると、濃度依存的にEAEが重症化すること、③発症初期のEAEにsCD40Lを投与すると、ピーク直前に血液脳関門が破綻する傾向にあること、さらに④血液脳関門のモデルである、血管内皮細胞を用いたナトリウム-フルオレセインの透過性実験において、sCD40Lが血管内皮細胞の透過性を亢進するという知見を得て、報告した(J Neuroimmunol. 2018;316:117-120. )。これらの知見より、sCD40Lは血液脳関門の破綻を通じてEAEを重症化させていると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

今回、①血液脳関門をリアルタイムで評価する手法を確立し、②抗sCD40L抗体の投与が血液脳関門の破綻を介してEAEを軽症化させるという我々の仮説を証明するとともに、③同薬の至適投与量および時期を検討することを目的として本研究を計画した。University College LondonのDepartment of Neuroinflammationでは、リアルタイムでの病勢把握を目的とした新規代謝イメージング法に関する技術を有しており、我々の研究を加速させることが可能である。Kenneth Smith教授の研究室(University College London、Department of Neuroinflammation、英国)へ2018年10月から2019年9月まで渡英することを計画していたが、研究が予定よりも順調に進んでいるため、渡英時期を早めて2018年4月から渡英することとした。

今後の研究の推進方策

はじめに、マウスの大脳皮質、小脳、網膜を用いてリアルタイムに動静脈周囲のミトコンドリアの機能を評価、動静脈における酸素需給バランスと脱髄病変との相関を観察し、safety factorを決定する。動脈(A)と静脈(V)の周囲のフラボプロテインの蛍光の比をとり(A/V ratio)、酸素濃度の条件を変えながら実験を行い、神経保護が可能になるA/V ratioを決定し、その数値をsafety factorとする。safety factorを見出すことで、副作用が出現しない必要最小限の量の薬剤を投与することが可能になると考えられ、将来的なヒトへの応用につなげたいと考えている。我々が用いているMOG35-55を投与したC57BL/6マウスでは、中等度の視神経障害をきたすことが知られている。また、Smith教授らの研究室では、experimental autoimmune uveoretinitis (EAU)という、より重症の視力障害を呈する動物モデルも有している。これら複数の動物モデルを使用し、様々な障害度の網膜の評価を行う予定である。

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公開日: 2018-12-17  

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