研究課題
研究代表者らは、寒冷曝露時に高効率に褐色化する新規のWAT(inducible BAT, iBAT)を発見し、寒冷曝露により、末梢組織の幹細胞マーカーである遺伝子Xの発現が顕著に誘導されることを見出した。本研究で、マウスの褐色脂肪株であるpBATや白色脂肪株である3T3L1細胞、またマウスから単離したBAT, iBAT, iWATのin vitro分化実験を行ったが、予想に反し、これらの細胞では遺伝子Xの発現はほとんど誘導されなかった。しかし、ヒトiPS細胞から褐色脂肪細胞への分化を誘導する実験では脂肪前駆細胞に該当する時期に一過性に本遺伝子の発現が上昇し、UCP1の発現が上昇する成熟褐色細胞の段階ではむしろ抑制されていた。このことから、遺伝子Xはより未分化な細胞ステージに限局して発現していることが明らかになった。一方、遺伝子Xは生体では褐色脂肪組織などに発現が認められ、寒冷曝露で発現が著明に増加した。そこで、脂肪組織内のどの細胞に発現しているかを解析するため、遺伝子X遺伝子座にGFPをノックインしたマウスを用いて解析した。その結果、遺伝子Xの発現はiBATでは室温では発現がほとんどみられないが、寒冷曝露によりUCP1と並行して著明に増加することを見出した。意外なことに、遺伝子Xは末梢組織の幹細胞マーカーであることとin vitroの実験から成熟脂肪細胞への分化に関わっていないにも関わらず、遺伝子X陽性細胞はほぼ全てのUCP1が陽性であった。遺伝子XはWnt/β-cateninシグナルを活性化することとWnt/β-cateninシグナルはベージュ化に必須であることが知られている。これらのことから、遺伝子Xは発生初期の脂肪細胞ではその分化に関わり、成熟褐色脂肪細胞ではごく少数のUCP1陽性細胞で寒冷曝露時の細胞増殖に関わるという、2つの異なる機能を有することが示唆された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
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