研究課題/領域番号 |
17KK0190
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
村田 航志 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (10631913)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2023
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キーワード | 神経科学 / 嗅結節 / 腹側淡蒼球 / 脳内報酬系 |
研究実績の概要 |
食べ物の香りや風味はおいしさをつくるが、腐敗物の臭いは不快感をつくる。また、納豆のような発酵食品の匂いは、食経験の有無によって好き嫌いがわかれる。嗅覚によって形成される快不快情動は動物に適応的な行動を促し、また過去の経験は匂いへの情動形成に適応的に影響する。嗅結節は嗅覚入力を受ける腹側線条体領域であり、主要な軸索投射先は腹側淡蒼球である。本研究課題では、嗅結節および腹側淡蒼球の神経回路構造と快不快情動の形成への関与を明らかにする。 2022年度は2021年度に引き続きCovid-19の影響によりミシガン大学アナーバー校Berridge研究室への渡航が中止となった。そこで2022年度はマウス・ラットの超音波発声(ultrasonic vocalization, USV)を指標とした情動測定システムを用いてラットの快情動の定量的かつ客観的な評価を試みた。ラットが嗜好性食品(チョコレート)を摂食する状況下で特有に生じるshort 50kHz帯USV発声を観察した。このチョコレート摂食時のUSVを分類・検出する機械学習モデル(ロジスティック回帰)が作成できた。また、オピオイド受容体拮抗薬の全身投与により、チョコレートの摂食量ならびにshort 50kHz 帯USVが減少した。オピオイドがチョコレート摂食行動とshort 50kHz 帯USV発声に関わることが示唆された。今後はチョコレート摂食時のshort 50kHz 帯USVを情動指標ととらえ、嗅結節および腹側淡蒼球の薬理学・光遺伝学実験と組み合わせて快不快情動の形成の神経機構を探る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
Covid-19の影響により2022年度も昨年度に続いてすべての渡航計画が中止となった。2019年度の渡航で修得したラット行動薬理学実験の手技を用いて、国内で可能な実験を中心に実施した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、嗅結節および腹側淡蒼球の行動薬理実験とオプトジェネティクス実験を行う。摂食行動ならびに超音波発声を指標に快不快情動形成への嗅結節および腹側淡蒼球の関与を検証する。ミシガン大学への渡航を再開し、Berridge研究室が所有する遺伝子改変ラットおよび行動試験装置を用いた実験を実施する。あわせてウイルスベクターを用いた嗅結節-腹側淡蒼球の神経路標識実験を進め、神経解剖学的な接続様式を明らかにする。
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