研究課題
消化器癌におけるMicrobiome(ヒト微生物叢)とエピジェネティック変化(LINE-1≒ゲノム全体のメチル化)の関連を網羅的に解析し、革新的なbiomarkerを開発することが現在実施中の科研費(基課題)の目的である。現在、私たちが構築した500例以上の食道癌データバンクを用いてbiomarker(microbiome)探索を進めているところであるが、今後は A.このbiomarkerを他のコホートを用いてvalidation(妥当性確認)すること、さらには、B.このbiomarkerが食道癌以外の消化器癌においても有用であるのかを検討すること が必要である。今回の国際共同研究の目的は、ハーバード大学ダナ・ファーバー癌研究所 Molecular Pathological Epidemiology (MPE) Laboratoryの所有する大規模な前向き疫学コホートのサンプルを用いて、上記A, Bに関して検証することである。Dana-Farber Cancer Institute, Dept of Medical oncologyの Prof. Shuji Oginoとメールでのやりとりを行い、研究計画について綿密に打ち合わせを行った。その後、2019年3月26日に渡米し、共同研究を開始したところである。
2: おおむね順調に進展している
2019年3月26日に渡米し、共同研究を開始したところである。ハーバード大学ダナ・ファーバー癌研究所 Molecular Pathological Epidemiology (MPE) LaboratoryのProf. Shuji Oginoは、大規模な前向き疫学コホートの消化器癌サンプルを所有しており、この分野の世界的第一人者である。そのデータは系統的に管理されており、バイオマーカー研究についてはスムーズに開始できると考えている。
ハーバード大学公衆衛生大学院とBrigham and Women’s Hospitalでは健康な12万人の女性を34年(Nurses' Health Study)、5万人の男性を24年(Health Professionals Follow-up Study)追跡して、癌を含めた病気の発生を疫学的に研究している。Prof. Oginoのラボではこの2つの大規模コホートにおいて追跡中に発生した消化器癌の癌細胞内の遺伝子の異常、Epigenetic changes (DNAメチル化)、酵素やその他のたんぱく質発現の変化を網羅的に解析している。追跡に先立ち、あるいは26年、36年という追跡中に、食べ物、ライフスタイル(運動・肥満度・たばこ・アルコールなど)、薬、家族歴、癌や他の病気の発生、生存状況も記録している。こうした病因に関するデータは癌の発生に先立って集められているためにバイアスのリスクがより少ないのが、前向きコホート研究の長所である。こうして蓄積された貴重な病因データ、さまざまな遺伝子の多形(SNPs)、癌細胞の分子異常、患者の生存状況を総合的に分析するというのがProf. oginoのラボの研究内容である。このような質の高いコホートを用いて、バイオマーカーのvalidationを行っていく。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Annals of Surgery
ページ: 1~1
10.1097/SLA.0000000000002754
10.1097/SLA.0000000000002985