研究課題
最終年度は、成果報告書の作成に研究活動の大半が当てられた。最終成果報告書の内容は、2018年8月から9月にかけて実施した現地調査の結果を踏まえたものとなっている。成果報告書の作成に関する打ち合わせは、2019年5月と12月に行い、成果報告書は2020年2月に作成が終わっている。それに関連した各自の研究活動について、まずボスニア全般については、多民族地域であるボスニアの民族間関係が改めてサーベイされ、グローバリゼーションが進展する現代の国際関係に対するボスニアの意味が検討された。移行期正義との関連では、現地調査でのインタビューの分析が行われ、行方不明者の捜索と処罰に関する重視、被害者による加害者本人との和解に関する否定的意見、他民族に対する加害者化などについて研究がなされた。次に、ジェンダーと人権救済に関しては、1990年代以降の国際社会に対して「ボスニア・モデル」が与えた大きな影響について研究が行われた。それに関連して、南アジアの事例が取り上げられ、比較政治学的考察が試みられた。治安部門改革については、ボスニアとインドネシアとの比較が行われ、そこからインドネシアの国軍改革の問題点が明らかになった。文化人類学との関係では、オーストラリア先住民との和解についての更なる動き、更に日本の先住民であるアイヌとの和解や謝罪の可能性について、ボスニアのケースとの比較研究が行われた。犯罪学関連では、2018年に実施した質問紙調査から得られたデータに基づいて、現代のボスニアにおける民族・宗教間対立に関する研究が行われた。社会心理学関連では、同じく質問紙調査のデータに基づいて、紛争後のボスニアにおいて民族的アイデンティティと他の民族集団も包含する共通内集団アイデンティティが、政府と警察の正当性知覚、民主主義の軽視、過激行動に対する支持的態度にどのような影響を与えているのかについて検討された。
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Security Studies 安全保障研究
巻: 1(2) ページ: 1-27
日本比較政治学会年報
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