研究課題
本研究の目的は、現代日本のヘイトスピーチに関する心的基盤を実証的に明らかにし、そのエヴィデンスをふまえた上で、現行のヘイトスピーチ対策法(2016年制定)をさらに超える新しい法規範形成の可能性を見据えて検討することにあった。研究4年目となる当該年度(最終、2020年度)には、2017年度から2019年度までの研究成果を踏まえてアメリカ政治学会で報告した。そして、そこで得た助言をもとに、追加の検討をした。まず、アメリカ政治学会では、「Indignity or Offense?」・「Following the Norms or Following the Crowd?」の二本の報告を行った。そして、前者においては、ヘイトスピーチ規制に対する市民の支持に影響を与える要因として、ヘイトスピーチ被害にあった犠牲者が侮辱されたと感じたかどうかよりも、その犠牲者の尊厳が傷づけられたかどうかについての配慮の方が重要であることを報告した。また、後者においては、多数派がヘイトスピーチ規制を支持するという記述的規範と、良い社会のためには他者との違いへの尊重が求められるとする指示的規範の2つの規範の影響を検証したところ、いずれもヘイトスピーチ規制態度に対して理論的に予測される効果が認められないことを報告した。その上で、当該テーマにおける内外の専門家から、今後の研究方針について、有益な示唆を得ることができた。そして、そのことを受けて、異なる道徳的価値に訴えるメッセージが、ヘイトスピーチ規制態度にどのように影響するかを確認するべく、第3回のサーベイ実験を実施した。その成果、ヘイトスピーチの危害に訴える文章は規制に対して賛成の方向に、公正に訴える文章は規制に反対の方向に寄与する効果が認められた。こちらの結果については、2021年度の日本政治学会で報告の予定。
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立命館法学
巻: 329(2020年4号) ページ: 113-137
Ritsumeikan Law Review
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政治思想研究
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