研究課題/領域番号 |
17KT0006
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
倉橋 拓也 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50432365)
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研究期間 (年度) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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キーワード | Lewis酸触媒活性 / Brensted酸触媒活性 / 理論化学計算 / 溶液XAFS測定 / 溶液磁化率測定 / 溶液EPR測定 / 3d遷移金属触媒 |
研究実績の概要 |
3d遷移金属元素、すなわち鉄やニッケルのイオンは最外殻電子軌道として3d軌道を有している。したがって、主量子数のより大きい遷移金属元素、例えば4d遷移 金属元素であるパラジウムや5d遷移金属元素の白金などよりも、炭素や窒素、酸素原子が有する最外殻軌道との軌道のエネルギー準位が近いために、有機合成に おいて結合の形成を促す触媒として本質的に潜在能力が高い。実際に、様々な形式の遷移金属触媒反応が鉄などの3d遷移金属元素で置き換え可能であることが近 年示されている。一方、3d遷移金属元素は3d 軌道における電子の局在性・方向性が強く、電子分極率、つまり『電気的なやわらかさ』が低い。したがって、反 応設計において配位子の選択は4dまたは5d遷移金属元素を用いる場合よりも、いわゆる『空間的構造と電子的構造』の観点から厳密に行う必要がある。本研究では、非極性溶媒中において基質のLewis塩基性・配位性により カチオン性鉄錯体が生成し、これがLewis塩基活性型Lewis酸触媒として機能していることを明らかにした。また、その溶液構造は質量分析・紫外可視吸収・XAFS 測定により4配位型錯体であることを確認した。触媒反応開発における実験結果と、分光学測定における結果を基にして、理論化学計算による触媒反応機構およ び触媒機能解析を実施した。その結果、塩化鉄が極めてLewis酸として優れた触媒として機能することを明らかにした。すなわち、基質に対しては強いLewis酸性 を示す一方で、生成物に対してはLewis酸性がより弱く作用することが判った。これらの結果として、触媒回転頻度が高いことを明らかにした。また、得られた知見を基にして、不斉触媒反応への応用を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新しい不斉触媒反応として塩化鉄を用いるイミンとジエンの環化付加反応を見いだした。この反応においては、不斉Brensted酸を配位子として利用することにより、高いエナンチオ選択的な反応が実現できることがわかった。また、触媒活性種を理論化学計算と分光測定(質量分析・紫外可視吸収・溶液XAFS測定)によって同定した。得られた結果を基にして、触媒反応機構の解析を実施することで、開発した不斉触媒反応における触媒回転頻度が理論的にも非不斉触媒よりも大きいことを明らかにした。すなわち、TDTSおよびTDIから求めたエネルギースパンが不斉配位子を用いない場合よりも小さいことを見いだした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において、反応開発と理論化学計算および溶液分光測定を組み合わせた研究方法の有効性を示してきた。今後の研究推進方策として、新規触媒反応開発に留まらず、溶液XAFS測定やEPR測定などの分光測定を実施するとともに、これらの結果を活用した理論化学計算を行い触媒機能の解明を実施することで、3d遷移金属錯体を用いる反応における触媒設計指針を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が予想以上に進捗したために、助成金の使用計画に変更を生じる結果となった。この結果を踏まえて次年度の研究計画を推進するが、具体的には反応開発と ともに分光測定や理論化学計算を実施する。繰越金に関しては、有機合成試薬などの購入に充てる。研究計画および予算の大幅な変更は不要と考えている。
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