研究課題/領域番号 |
17KT0007
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 庸裕 京都大学, 工学研究科, 教授 (70201621)
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研究期間 (年度) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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キーワード | X線吸収分光法 / その場観察 / 同時観察 / SPring-8 / 自動車排ガス浄化触媒 |
研究実績の概要 |
本研究においては3つの触媒反応についてXAFSスペクトルを測定し,反応速度論解析の結果と比較しつつ構造速度論解析を展開する計画であった.2018年度は「担持金属ナノ粒子の酸化還元挙動」について検討を行った.Rh系自動車排ガス浄化触媒に注目し,X線吸収分光法(XAS)および多種のガス分析装置を用いて,模擬排ガス環境下でリアルタイム分析を行うことにより,Rh粒子の酸化還元挙動に関する知見を得た.このような知見は,自動車排ガス浄化触媒の高耐久化は高価な貴金属使用量の低減につながり,経済的なインパクトも大きい.世界最高レベルの性能を有する大型放射光施設SPring-8の共用ビームラインBL01B1にて,X線吸収分光法と様々なガス分析が可能なOperando XASシステムを構築した.この装置は,ガス混合装置によりCO,NO,HCおよびO2を含む模擬排ガスを作って,XAS測定が可能な高温触媒反応装置に導入し,触媒反応後の出口ガスをマイクロガスクロマトグラフ,NOx計,四重極型質量分析計で分析することができる.本実験では,自動車排ガス浄化触媒として,酸化アルミニウム担体に対して質量比で1 %のRhを含むモデル触媒を用いた.各種ガス分析装置により,想定する触媒反応が進行していることを確認しながら,XAS分析により貴金属成分の酸化還元挙動を追跡した.各分析結果を詳細に解析したところ,貴金属粒子表面の酸化過程において,酸化された箇所が徐々に広がっていくのに対して,還元過程では表面がランダムに還元されていくことを見いだした.本研究では,自動車排ガス浄化触媒上の貴金属粒子が模擬排ガス中でどのように酸化還元を起こすのかという基礎的な知見を得ただけではなく,Operando XASシステムが触媒のその場分析に対して,強力なツールであることを実証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,①担持金属ナノ粒子の酸化還元挙動,②Oxygen Storage and Capacity (OSC)材料の構造変化,③合金ナノ粒子の超微量貴金属添加効果のそれぞれに対して,反応時間ごとのXAFSスペクトルを測定して,構造速度論解析を展開ことを目的としている.XAFS測定にあたっては,Phase 1「実験室における調査・準備」・Phase 2「大型放射光施設における測定」・Phase 3「実験室におけるデータ解析・再検討」の3つのPhaseを設定した.すなわち,一年に数回しかないXAFS測定のチャンスを十分に生かせるように実験室での検討を十分に行うように計画した.2018年度はこのサイクルをうまく循環させることができたため,大型放射光施設SPring-8の共用ビームラインBL01B1にて,X線吸収分光法と様々なガス分析が可能なOperando XASシステムを構築することに成功した.本年度は①について集中的に検討を行ったが,来年度以降に②および③を検討するにあたっても,今年度構築したシステムを使う予定をしており,加速度的に研究が進行すると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度においては引き続き検討事項①担持金属ナノ粒子の酸化還元挙動に関するOperando XAFSスペクトル測定を行いつつ,検討事項②Oxygen Storage and Capacity (OSC)材料の構造変化についてもOperando XAFSスペクトル測定に着手する.さらに,大型放射光施設SPring-8の共用ビームラインBL01B1よりも速いXAFSスペクトル測定が可能なBL28B2においても同様なシステムを構築する.また,Operando XAFSのバリエーションを増やすために,各種の分光法を測定できるようにビームラインを整備する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度において実験室および大型放射光施設において新しい反応装置を作成する予定をしていたが,既設の反応装置で代用可能となったため,計上していた物品費が大幅に少なくなった.企画していた反応装置の組み立ては来年度に行う予定をしているので,その物品費として2018年度に計上する.
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