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2017 年度 実施状況報告書

理論計算が先導する遷移状態制御に基づく多様性指向型触媒・反応開発

研究課題

研究課題/領域番号 17KT0011
研究機関立教大学

研究代表者

山中 正浩  立教大学, 理学部, 教授 (60343167)

研究期間 (年度) 2017-07-18 – 2020-03-31
キーワード遷移状態制御 / 分子触媒設計 / DFT計算 / 不斉合成
研究実績の概要

これまでの触媒・反応開発は、多くの実験検討で培われた経験的な分子像に基づいて進められてきたが、近年の計算機や計算手法の進展により、理論計算に基づく合理設計が可能な時代が到来している。本研究では、理論計算を先導的に活用した高効率・高選択的な触媒・反応開発と、その合理設計手法の確立を目的としている。特に、触媒/基質の相互作用ネットワークによって特定の遷移状態を安定化する「遷移状態制御」に基づき、複数の反応点(官能基)を含有する基質を分子認識して反応部位・立体選択的な分子変換を達成する触媒を開発する。さらに、多官能性を有する1つの鍵分子ユニットから、様々な有用物質を高選択的に提供できる「多様性指向型触媒・反応」への展開を目指す。具体的には、(Ⅰ)GRRM法・AFIR法を用いた多官能性基質の反応に潜在する遷移状態の網羅探索、(Ⅱ)遷移状態制御に立脚した高精度DFT計算による触媒の合理設計、(Ⅲ)多様性指向型触媒・反応の実験検討を相互に連携しながら実施する。本年度は、主に理論計算と合成実験の予備的な検討を実施した。P-スピロイミノホスホラン触媒によるアズラクトンとN-アシルピロールの不斉1,6-付加反応、グアニジン-ビスウレア触媒による1,4 -ナフトキノン誘導体に対する不斉エポキシ化反応について理論的検討を行い、水素結合ネットワークを基盤とする立体制御機構を解明した。また実験の初期検討として、独自に設計・開発した金属‐ビスアミジン触媒のルイス酸部位、ブレンステッド酸部位における協働的相互作用に着目し、不斉向山アルドール反応における分子認識能を検討したところ、α-ケトエステルに対して高い化学選択性を示すことを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「遷移状態制御」の1つの設計指針として、計算検討によって水素結合ネットワークによる制御機構について一定の成果を得た。実験検討で先行しているルイス酸・水素結合などの異種相互作用の協働作用と併せて、これらの成果は分子認識能に着目した研究方針へとフィードバックされ、今後はGRRM法・AFIR法を用いた遷移状態の網羅探索法を確立しながら、異種相互作用の協働作用による多官能基質の遷移状態制御について展開する。以上より、順調に進展していると判断できる。

今後の研究の推進方策

本年度に得られた実験・計算の予備的検討の知見に基づき、今後は異種相互作用の協働作用を指向して、多官能基質に対して高度な分子認識能を示す触媒設計を進める。理論計算が先導する触媒の合理設計に向けて、単純な(単官能基質)に対するGRRM法・AFIR法を用いた遷移状態の網羅探索法を確立し、多官能基質に対しても適用していく。併せて、引き続き関連するDFT計算を実施し、金属触媒部位や酸・塩基触媒部位における協働作用による立体制御機構についてもさらに知見を深め、実際の触媒開発にフィードバックする。

次年度使用額が生じた理由

GRRM・AFIR用ワークステーション一式の購入以外の物品費については、大部分を本研究に関わる試薬やガラス器具などの購入に充てている。本年度は研究の進捗の都合上、反応遷移状態の計算検討に多くの時間を費やし、予備的な実験検討として研究室に既存の分子触媒を用いたため、新規に必要となる試薬・ガラス器具に充てる購入費用が抑えられることとになった。本年度に得られた実験・計算の予備的検討の知見に基づき、次年度は、多官能基質や新規触媒の新規合成など実験検討に費やす時間の増大が見込まれる。本年度予算の差額分については、本研究に関わる試薬やガラス器具などの購入費に充てる予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Origin of High Regio-, Diastereo-, and Enantioselectivities in 1,6-Addition of Azlactones to Dienyl N-Acylpyrroles: A Computational Study2017

    • 著者名/発表者名
      Yamanaka, M.; Sakata, K.; Yoshioka, K.; Uraguchi, D.; Ooi, T.
    • 雑誌名

      J. Org. Chem.

      巻: 82 ページ: 541-548

    • DOI

      10.1021/acs.joc.6b02572

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Total Synthesis of Pyrrole-Imidazole Alkaloid (+)-Cylindradine B2017

    • 著者名/発表者名
      Iwata, M.; Kamijoh, Y.; Yamamoto, E.; Yamanaka, M.; Nagasawa, K.
    • 雑誌名

      Org. Lett.

      巻: 19 ページ: 420-423

    • DOI

      10.1021/acs.orglett.6b03722

    • 査読あり
  • [学会発表] The Interplay between Experiment and Computation: Rational Design of Chiral Space in Asymmetric Catalysis2018

    • 著者名/発表者名
      Yamanaka, M.
    • 学会等名
      日本化学会第98春季年会
    • 招待講演
  • [学会発表] Co触媒によるシクロプロパンの開裂を含む分子内ヒドロアシル化 反応の理論的検討2018

    • 著者名/発表者名
      森悠斗、吉戒直彦、山中正浩
    • 学会等名
      日本化学会第98春季年会
  • [学会発表] グアニジン‐チオウレア触媒を用いたエントロピー依存的不斉アザ‐フリーデル‐クラフツ反応における立体制御機構の理論的解析2018

    • 著者名/発表者名
      中野克洋、川口昌輝、細谷圭介、小田木陽、長澤和夫、山中正浩
    • 学会等名
      日本化学会第98春季年会
  • [学会発表] グアニジン‐チオウレア触媒を用いたエントロピー依存的不斉アザ‐フリーデル‐クラフツ反応の立体制御機構に対する実験的検証2018

    • 著者名/発表者名
      中野克洋、川口昌輝、細谷圭介、小田木陽、山中正浩、長澤和夫
    • 学会等名
      日本化学会第98春季年会
  • [学会発表] アミジニウム-カルボキシレート塩橋に基づく新規超分子不斉触媒の開発2018

    • 著者名/発表者名
      矢崎恭史、堤亮祐、山中正浩
    • 学会等名
      日本化学会第98春季年会
  • [学会発表] α,β,γ,δ-不飽和ケトンを用いた位置選択的 aza-Morita-Baylis-Hillman 反応に関する理論的解析2017

    • 著者名/発表者名
      中野克洋、権藤匠洋、百武龍一、川端猛夫、山中正浩
    • 学会等名
      第10回有機触媒シンポジウム
  • [学会発表] グアニジン-ウレア触媒を用いた一置換型 1,4 -ナフトキノン誘導体に対する不斉エポキシ化反応2017

    • 著者名/発表者名
      川口昌輝、中野克洋、小田木陽、山中正浩、長澤和夫
    • 学会等名
      第10回有機触媒シンポジウム
  • [学会発表] The interplay between experiment and computation: Rational design of bis-2-aminothiazoline as a new chiral scaffold2017

    • 著者名/発表者名
      Yamanaka, M.
    • 学会等名
      The 7th Sino-Japanese Symposium on Organic Chemistry for Young Scientists
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2018-12-17  

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