研究課題/領域番号 |
17KT0014
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 徹也 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (90513359)
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研究分担者 |
秋山 泰身 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, チームリーダー (50327665)
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研究期間 (年度) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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キーワード | T細胞 / 多様性 / 恒常性 / 胸腺 / 胸腺上皮細胞 / 数理モデル / 微分方程式モデル |
研究実績の概要 |
致死量以下のX線によって一時的損傷を与えたマウス胸腺に存在する主要な分化状態のT前駆細胞および胸腺上皮細胞を対象として、その細胞数の経時的変化の計測を行った。予備実験データと合わせて得られた細胞数変動ダイナミクスデータに対して、微分方程式モデルに基づくモデルのフィッティングを進めた。特にデータへのモデルフィッティングによって明らかになった相互作用が既知の分子生物学的知見と整合するかを確かめることでモデルの改良を行い、より生物学的妥当が高く、同時に定量的に細胞数変動データを再現できるモデルの構築を進めた。予備実験で不十分であったDN細胞群の細胞数のより正確な見積もりを行い、より正確なデータおよびモデルの構築に努めた。またデータへの非線形最適化で得られたパラメータに対する統計的妥当性を検証するため、ブートストラップに基づくパラメータ範囲の統計推定法を構築し、パラメータを範囲として推定した。これらの結果を免疫学会・EMBL 国際会議・Lyon Sysbio ワークショップ・理論免疫ワークショップ・King College Londonなどで発表し、主に研究内容の生物学的な妥当性などについてフィードバックをえて、さらにモデルの改良につなげた。 T細胞群受容体データ解析に向けて、申請者が過去に計測したデータや公開データに関するクオリティの確認、受容体多様性を低次元化して表現する複数の手法(レニープロットおよびDECOLD)の検討とそれらの問題点の検討などを行った。低次元化に基づくDECOLDについては、新たにわかってきた計算機上の問題や多様性の高い実データへの有効性などを論文のリバイスにおいて反映させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
29年度計画に沿ってモデルの改良が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策:推定されたパラメータの値について、その生物学的な妥当性をさらに検討するため、これまで発表された胸腺内T細胞分化の結果を整理・まとめて、我々のパラメータ推定の結果と比較することで整合性・妥当性を確かめる。 また得られたモデルについてその力学系の観点からの解析もすすめる。今後は解析の比重を細胞数変動からT細胞受容体のシーケンス解析に移して、T細胞発生過程におけるT細胞多様性の変化を解析する研究にシフトをする。またモデルから必要となる新たな定量計測実験などについても必要に応じて準備をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究結果に関するフィードバックを主に海外研究者から得るために海外出張費用を見込んでいたが、研究代表者が当該年度に大学のサポートで英国に中期滞在していたために想定よりも海外発表に関する予算が少なくなった。そのため、主に旅費において予定学と支出額の差が生じた。
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