芽球骨片運搬に関わる細胞・分子機構の解明を目的にした微小で粗な組織を用いた網羅的RNA配列決定に関し、コロナ渦にあって思うように研究を進められず研究費を繰り越し、昨年度(2020年度)バイオインフォマティクスを用いた解析を学生1人と進めてきた。 今年度は得られた候補遺伝子群の遺伝子クローニングに着手した。カワカイメンは非モデル生物であり系統もないため、遺伝子クローニングが必要である。プライマー、RNAポリメラーゼ、RT-PCR条件などを検討し、エラーの少ないRNAポリメラーゼを用い、2 kbほどの遺伝子部分のクローニングを行った。研究室で長いこと行って行かなかった遺伝子クローニングの実験系を、RT-PCR条件に限らず、制限酵素、キット、クローニングベクター、解析ツール、など全て1つ1つ学生と申請者とで再検討、より良く刷新し稼働させることができたことは、このプロジェクトを進めて行くための基礎になった。 今年度の繰り越し残高は少なく、本研究費でクローニングし配列決定を行えた遺伝子は2遺伝子であるが、プロジェクトは、別の研究費で引き継ぎ遂行しており、50遺伝子程のクローニングを試み、30余りの遺伝子クローニングを配列決定まで完了させることができた。今後は、芽球形成を誘導し、芽球形成中のカワカイメン幼弱個体を用いたwhole- mount in situ hybridization(WISH)を用いて、mRNA発現解析を行い、芽球骨片運搬に関わる細胞のWISHによる検出を可能にすること、また分子機構解明の足がかりを得えることを目指している。
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