研究課題/領域番号 |
17KT0033
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 昌志 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10281073)
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研究分担者 |
大神 信孝 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (80424919)
矢嶋 伊知朗 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (80469022)
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研究期間 (年度) |
2017-07-18 – 2021-03-31
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キーワード | 皮革工場 / クロム / 河川 / 排水路 / 形質変換 / 分子機構 |
研究実績の概要 |
【背景】我々が日常的に使用している皮革製品は、「クロムなめし」と「その他のもの」に分類される。生産コストが低く、輸入税率も格段に安いので、世界の皮革製品の80%以上がクロムなめしで作製されている。経済グローバル化に伴い、先進国が環境汚染を誘発するクロムなめしの作業工程を開発途上国に押しつける構図が新たなグローバル・イシューを産み出している。 【目的】クロムなめし工場では、皮革製品の製造に大量の水を必要とする。もし、クロムなめし工場から高濃度のクロム等の有害元素を含む大量の廃液が流れ出ると、工場内だけでなく、周辺水域に甚大な環境汚染と健康被害を誘発する可能性がある。本研究では、皮革製品を世界約70ヶ国に輸出しているバングラデシュと、主要輸入国の日本に焦点をあて、途上国と先進国への両方向性アプローチを実施する。まず、①環境汚染の現状把握→②汚染物質の健康影響評価→③解決策の提案・実践からなる問題解決スキームを構築・実践し、開発途上国における問題の緩和を推進する。 【研究成果】米国のブラックスミス研究所の2013年の報告において「世界で環境汚染が最も深刻な10地点」として、バングラデシュの皮革工場集積地域(ハザリバーグ)が選ばれた。本研究では、ハザリバーグの排水路で採水し、排水路の水に含まれるクロムには、3価クロムだけでなく6価クロムも含まれていることを証明した。また、3価と6価のクロムに複合暴露により、皮膚角化細胞の形質転換を相乗的に亢進させることを示した。さらに、形質転換にはMEK/ERKおよびAKTの活性化が関与している可能性を示し、分子機構の一部を証明した。さらに、3価と6価のクロムの両方を、高効率に吸着できる浄化材を開発することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、2018年度までに、①バングラデシュの皮革工場集積地域における水質汚染の現状を把握し、②汚染物質の発癌毒性を細胞レベルで評価し、③解決策となる可能性のある浄化材を提案することに、成功している。ゆえに、当初の計画以上に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、開発途上国の皮革工場内環境・工場労働者・周辺住民に焦点をあてて、有害元素のモニタリングを進める。細胞生物学実験・動物実験に加えて、労働者を対象とする疫学調査により、元素の健康影響を評価し、浄化すべき汚染物質を特定する。さらに、浄化技術の開発・改良・実用化を推進し、皮革産業に関連して発生しているグローバル・イシューの緩和をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予想に反し、環境汚染問題の影響からハザリバーグにある皮革工場の多くはヘマエプールに移動することになった。研究遂行上、ほとんどの皮革工場が移動した後のハザリバーグの環境汚染の現状を再調査することが不可欠となった。さらに、新規に多くの皮革工場が移動してきたヘマエプールにおいても、環境汚染の現状を把握することが不可欠であることから、ヘマエプールにおいて環境調査の許可を取得するとともに、環境汚染の現状を把握し、健康影響を調べる研究を追加で実施する必要が生じた。
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